クールな君と愛しすぎる僕
「こんにちは、和光です」

「あの!
もう、寧音に関わらないでくださいね!
ここで、約束してください」
微笑み言う、登羽。
しかし、その瞳は黒く澱んでいる。

「それは無理だろ?
俺の配属先、寧音のいる課だし」
それでも、祥生は淡々と答えた。

「はぁー、そうですか。
わかりました」

「は?」

「寧音ちゃん、帰ろ?
二人だけのお家に!!」
寧音の腰を抱いて、促す登羽。

「え?登羽?」

「早く帰りたい!
もう、やなの!
とにかく、やだ!
吐き気がする。
これ(和光)が寧音ちゃんの元彼だってこと、寧音ちゃんの目にこれ(和光)が入ってるってこと、寧音ちゃんの耳にこれ(和光)の声が入ること、これ(和光)と寧音ちゃんが同じ空気を吸ってること、全て………!」

「ちょっ…お前!
“これ”って失礼━━━━━━」

「汚ない手で、僕に触るなクズ」

「「え……」」
これには祥生だけでなく、寧音も驚いていた。
登羽はこんな乱暴な言葉を使わないし、こんな恐ろしい人間ではない。

「いい?
寧音は僕の寧音なんだ。
僕以外が触る、見る、声を聞く、声を聞かせる……
許されない。
そして、僕に触れるのも、僕の目の中に入れるのも、声を聞かせるのも…寧音だけしか許されない。
これは“警告”だよ。
次はない。
破ったら、お前の全てを消してやる」


そう言って寧音の腰を抱き、去っていった。


「あいつ、ヤバい……」
取り残された祥生の呟きだけが、響いていた。




そして登羽は寧音の腰を抱いたまま、晴彦に電話をかけた。
「あ、はる?」

『どうしたー?』

「前に頼んでたマンションあるじゃん?」

『ん』

「今からそこに引っ越すから、用意してくれる?」

『了解~』

タップして、通話を切った登羽。
寧音に向き直った。


「登羽?」

「寧音ちゃん、今から僕達二人だけのお家に行くから!」

「え?意味がわからない」

「そこはね。
僕と二人だけの聖域なの。
だからね。
寧音ちゃんは、もう二度とそこから出れないんだよ?」

「………え?」
さすがの寧音も、かなり動揺し固まっている。

「わ…////その固まった顔も、チョー可愛い~!」

「と、登羽。ちょっ…と待って!
出られないって……
仕事は?」

「辞めるの、寧音ちゃん」

「え?嫌だよ!
私まだ、やりたいこ━━━━━━」

「和光がいるとこに行かせるわけがない」

「だから!
祥生には、ちゃんと━━━━━」

「は?
祥生?
祥生って誰のこと?
馴れ馴れしく、元彼の名前を呼ばないで!!
寧音は僕の寧音なんだよ!!?」

初めて見る、登羽の恐ろしい顔。
思わず寧音は、後ずさった。
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