クールな君と愛しすぎる僕
「ご、ごめんね!
和光さんとは、本当にちゃんと断ったから何も…」

「寧音ちゃんが断ったとか、関係ないよ?
一緒の課に配属って……あり得ない!!!」

「登羽、お願い!!」

「寧音ちゃん」

「え?」
頬を包み込み、目を覗き込む登羽。

「寧音ちゃん、言ったよね?
“私は登羽と生きていきたい”って。
僕の束縛、受け入れるって」

「え……」

「誠実な寧音ちゃんが、嘘つくわけないよね?」

「登羽…」

「…………寧音。
自身の誠実さを、裏切っちゃダメだ」




そのまま、あるタワマンに連れていかれた寧音。

中に入り、驚愕する━━━━━━

玄関に入ってすぐに通る廊下。
壁に、寧音の写真がびっちり貼り付けられていたのだ。

「な、何…これ……」

そしてそれは、広いワンルーム全ての壁に繋がっていた。


そして、棚には寧音の捨てたはずの私物が綺麗に陳列されていた。

更に部屋中には、寧音の香水の香りが充満していた。





「………」



あまりの状態に、もう……寧音は、言葉がでなくなっていた。



「━━━━━━凄いでしょ?これ!」

満面の笑みで話し出す、登羽。


「これ、元はレンタル倉庫に保管されていたもんなの~!
ずーーーっと、撮り貯めていた写真と、寧音ちゃんの捨てた私物!
あとー、寧音ちゃんの香り!
凄くない?」




寧音は、思う。

あぁ…これが、束縛“される方の”気持ちか…と。

言葉にできない、なんとも言えない絶望感。


逃げなきゃ!
逃げなきゃ!
逃げなきゃ!

そう思うのに、身体が動かない。


いや、違う。

逃げられない━━━………


何故か“冷静に”そんなことを考えていた。
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