クールな君と愛しすぎる僕
そして、二日後。

駅で待ち合わせた、登羽と寧音。
「あ!関水さん!」
「お待たせしました」

「行きましょ?」
「はい」

「もう予約してるんですが、フレンチでもいいですか?」

「あ、はい。
わざわざ、すみません」

「いえ!
僕が誘ったんだから、当たり前ですよ!」


ホテル最上階の、フレンチレストラン━━━━━━
冷静な寧音も、驚いている。

「辰沼さん、こんな高いとこ…」
「あ!僕にご馳走させてくださいね!」

「え?ダメですよ!」

「どうしてですか?」

「どうしてって、恋人や友人でもないのに……
というより、恋人や友人でも何かイベントがないとご馳走なんて………!」

「ほんと、真面目というか…誠実なんですね……!」

「え?」

「だったらこういえばいいですか?
━━━━━」
寧音の耳に口を寄せ、囁いた。


“口説いてるんですよ?僕”



この日から“毎日”登羽は、寧音にアプローチするようになる。

「━━━━━関水さん!」
「辰沼さん」

「行きましょ?」
「はい」

初めての食事から、丁度一ヶ月経った。

ほぼ毎日、仕事終わりは二人で食事している登羽と寧音。
最初は毎日懇願するように誘ってくる登羽に、断るのは申し訳ない気がして受け入れていた寧音。
次第に、登羽との食事が“楽しい”と思うようになっていた。

そして今日も、仕事終わりに駅で待ち合わせていた。

「何が食べたいですか?」
「あ、これ見てください」
スマホの画面を見せる、寧音。

「パスタ?」
「はい。ここ、とっても美味しいんですって。
どうですか?」

「はい!もちろん、いいですよ!」



登羽は、ここ一ヶ月間で日に日に寧音に夢中になっていた。

無表情で、控え目。
口数も少なく、おとなしい。
笑顔も、一度も見たことない。

しかしよく周りを見ていて、食事中登羽への気遣いを忘れない。

律儀で誠実。

夕食の食事は、登羽がご馳走している。
かなり謙遜する寧音に“カッコつけさせてください”と言い聞かせる。

しかし寧音は、次の日会うと必ず手土産を登羽に渡してくるのだ。

「昨日も、ご馳走様でした。
これ、受け取ってください。
辰沼さんがお好きだと言っていた、お酒です」と。

律儀な寧音らしい。



登羽は、寧音への想いを募らせていった━━━━━━
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