死体写真2
背を屈めで中から出てきたのはもちろん美幸だ。


美幸の右手にはカッターナイフが握りしめられていて、強い意思を感じる。


最初は誰かを殺すことに抵抗を覚えていた美幸だけれど、ここに来るまでにすでに覚悟は決めていた。


下山したあとに罪に問われるかもしれないが、それでもここで死ぬよりもマシだった。


他愛もない会話を続けている明日香と豊のふたりにそっと近づいていく。


明日香がふいに振り向いてしまわないように、豊が手を握ってくれている。


あと少し!


明日香と美幸の距離はあと1メートルほど。


手を伸ばせばその体にふれることができる距離だ。


緊張から呼吸をすることも忘れて目の前の明日香を凝視する。


明日香が話をするごとに艶のある豊かな髪の毛がサラリと揺れる。


捕まえられる!


美幸が明日香に飛びかかろうとしたその瞬間だった。


明日香が振り向いた。


満面の笑顔で美幸を視界に捉え、同時に身をかわしていた。
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