ホワイトデーの恋人
カランカラン__

扉を開けると、男のお客さんが1人だけいた。

私は男の人が座っている席から1つ空けた席に座った。

すると、

「あれ?横に座ると思ってたのに」

と男の人が私に話しかけてくれた。

私は何が何だか理解できなくて

「へ?」

と間抜けな声を出してしまった。

男の人はクスクスっと笑って

「君が来るまで俺1人で寂しかったんだ。話し相手になってくれない?」

そう聞かれて、私は頭にハテナを浮かべながらもコクリと頷いた。


しばらく話していると恋愛の話に発展して、お互いの恋愛事情などを話した。

「君は今彼氏とかいるの?」

そう聞かれて

「彼氏ですか、そんなもの存在するんですか?」

なんて言うと何故か自分でも虚しくなってきて、ポロッと涙が出てきた。

男の人は目を少し丸めて驚いていたが、すぐに私の背中に手をあててくれた。

「私だって、みんなみたいに恋人と色んなことしたいけど…、」

と言葉を濁していると

「大丈夫。いつかは出来るはずだよ。」

って、頭をポンポンと撫でてくれた。

私はようやくお酒が回ってきたのか、そのまま重い瞼を閉じた。
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