失恋のカノン

「…な、んで」

不服を申すように、理由を聞いた。自分の中で答えを知ってしまっているのにあえてこの言葉を選んだ。

「その理由を話そうと思って来たんだけど、移動しない?」

こう彼は提案をした。初めてまじまじと彼の顔を見たけれど、とっても穏やかでちっとも表情が乱れたりしない。ここでその話をするのも気まずくて、ゆっくり頷いた。



この日、初めて授業をサボった。罪悪感などなく、今日は仕方ないって思えた。
公園のブランコでゆらゆら足を伸ばしたり、曲げたりしてまるで飛ぶことができそうなくらい高くまで漕いだ。二人は黙々とブランコを漕いでいた。ぎぃぎぃと鳴る鉄の錆びた音しか聞こえなかった。涙はもう乾いていた。彼をちらり、と見た。やはり何を考えているかわからない。彼はぼそりと呟いた。

「久々にブランコした」

「私も」

会話が始まったのが合図と言わないばかりに、漕ぐのをやめた。その振り子が落ち着くのを待って、言葉の続きを話した。
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