バニラな恋に恋焦がれて
高校デビューは大成功!?
○通学路(朝)
私、花咲 美郷は、根っからの少女漫画好き。
小学生の頃から愛読書と言えば少女漫画で、ずっと可愛い少女漫画のヒロインに憧れていた。
中学生の美郷は、厳しい校則にしっかり従う芋女だった。
眉を整えたこともなければ、メイクなんてしたこともないし、スカートの丈も校則通り膝下丈。
それなりに友達はいたものの、パッとしない学校生活を送っていた。
中学校を卒業して、来月から高校生。
そんな時、ふと少女漫画のフレーズが気になった。
“高校デビュー”
美郷「してみよっかな、高校デビュー」
ころんとバニラ飴を口の中で転がす。
そんな一言から、美郷の高校デビューは始まった。
最近は本当に便利な世の中で、メイク動画を無料でたくさん見ることができる。
思い立った美郷は、動画サイトやSNSを漁りまくり、メイク術とファッションを必死に勉強した。
美郷「ふっふ、ふーん」
メイクは練習通りバッチリで、長い髪もふんわりと巻いてみた。
もちろんスカートの丈は膝下じゃなくて、膝上丈。
気持ちが高ぶっている美郷は、鼻歌を歌いながら登校していた。
今日は、高校の入学式。
美郷の通う高校は、全寮制。
生まれ育った田舎を出て、都会の学校に行くのが夢だった。
自立した生活を送ってみたいと両親に頼み込み、全寮制の高校に進学させてもらった。
そのため、荷物は多い。
ほとんどは宅配で送ったけれど、多少の着替え類が入ったキャリーバッグを引いて、学校へと向かった。
○学校・学生寮(朝)
生徒会役員「新入生の皆さんはこちらへどうぞ」
学生寮に着くと中へと案内された。
受付のようなところで名前の確認をされる。
美郷「花咲 美郷です」
生徒会役員「花咲 美郷さんですね。ご入学おめでとうございます」
美郷「ありがとうございます」
生徒会役員「花咲さんのお部屋は3階の315号室です。この後入学式があるので、部屋に荷物を置いたら、体育館に移動してください」
丁寧な説明を受けてから、部屋へと向かう。
○学生寮・美郷の部屋(朝)
ウキウキしながら部屋の中へと入る。
ぐるりと部屋の中を見渡す。
美郷(今日からここに住むのか)
部屋の中には、シングルサイズのベッドがひとつ。
机と椅子が隣に並び、収納に便利な大きめのクローゼットがあった。
美郷(実家の部屋よりも住み心地が良さそう)
入学式まであまり時間がなかったため、荷物はそのまま部屋に放置して、体育館へと向かうことにした。
○学生寮・廊下(朝)
来実「あっ」
廊下へ出ると、隣の部屋からちょうど同じタイミングで人が出てきた。
美郷と来実の目が合う。
美郷「あっ……」
来実「か、可愛い〜っ!」
美郷「わぁっ」
突然来実に抱きつかれる。
来実「突然ごめんねっ、可愛すぎてつい……」
美郷から離れた来実は申し訳なさそうにした。
驚きのあまり美郷は固まっている。
来実「私は隣の314号室の羽生 来実!良かったら友達になろう!」
背は美郷よりも少し低くて、お団子ヘアが特徴的な来実。
美郷「嬉しいっ!私でよければ」
隣の部屋同士仲良くなって、美郷と来実は一緒に体育館へ行く。
○体育館(朝)
吹奏楽の演奏で入場し、入学式が始まった。
新入生が立ち並ぶ体育館。
美郷(校長先生の話って、やっぱり退屈)
そう思いながら、遠くを見る美郷。
校歌吹奏、生徒会長からの話、式は刻々と過ぎていった。
空気がザワついたのは新入生代表挨拶の時。
美郷は退屈なあまり、欠伸をして瞼が閉じそうになっていたが、そのざわつきで目が覚めた。
美郷(何事?)
そうみんなの視線の先を見ると、1人の男子生徒が登壇していた。
男子生徒は、演台の前に立ち、一礼する。
女子生徒1「ねぇ、見て。めっちゃかっこよくない?」
女子生徒2「超イケメン!やばくない!?」
そんな声が周りでは行き交っていた。
美郷(確かにすごく顔が整っていてイケメン)
遊ばれている黒髪がとっても似合っていて、スっとした鼻筋が綺麗な顔立ちの男子生徒。
怜「春の息吹が感じられる今日───」
オマケに声までイケメンだ。
周りの女子生徒は、この一瞬で恋に落ちてしまったようだった。
怜「───以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます。1年1組、桐嶋 怜」
美郷(1年1組かぁ。同じクラスだ)
この時はそれくらいにしか思っていなかった。
イケメンな桐嶋 怜よりも、これから始まる新生活にウキウキワクワクが止まらなかった。
初日から友達もできて、美郷の高校デビューも絶好調。
これから起こる出来事に大きな期待を寄せていた。
○学生寮・美郷の部屋(放課後)
そんな高校生活もあっという間に2ヶ月が過ぎた。
高校デビューは大成功。
来実「美郷ちゃんはモテモテだねー!」
放課後、美郷の部屋で来実とお茶会。
そんな今日も来実とお茶会をする前に、美郷は男子から呼び出しされていた。
○(回想)学校・裏庭
男子生徒「花咲さん、来てくれてありがとう」
美郷「ううん、話があるって言ってたけどどうしたの?」
夏が近づき、青々とした葉がつく立派な木の下で、男子生徒は照れくさそうにする。
この手の告白にはもう慣れた。
無事に高校デビューに成功した美郷は、今まで彼氏は愚から男子とも関わりがなかったのに、毎週のように告白されるようになっていた。
男子生徒「実は花咲さんに一目惚れして……良かったら俺と付き合ってください!」
男子生徒は頭を深々と下げて、手を差し出してくる。
美郷「気持ちは嬉しい!ありがとう!でも───」
(回想終了)
○学生寮・美郷の部屋(放課後)
来実「でも、なんで彼氏作らないの?」
美郷「うーん、好きでもないのに付き合うのはなって思っちゃって……」
来実「美郷ちゃん真面目すぎ」
美郷は、誰の告白も受けずに振り続け、“高嶺の花”と言われていた。
お菓子を片手に、一番大好きな飲み物であるバニララテを飲む。
美郷「でも断り続けるのもなんか胸が痛くて……」
美郷(せっかく想いを伝えてくれているのに、ごめんなさいと何度も伝えるのは申し訳ない気持ちになる)
来実「もう、優しすぎるんだから!そんなところが好きなんだけどねー」
来実は優しく微笑んで、お菓子をパクリと口に入れた。
来実「美郷ちゃんに素敵な彼氏ができるように応援してる!」
美郷「ありがとう、来実ちゃん」
○学校・裏庭(放課後)
別の日。また美郷は告白に呼び出されていた。
男子生徒「急に呼び出してごめんね」
そんな男子生徒の後ろに、友達であろう人たちが隠れているのが見えた。
美郷(告白を見守りに来てるのかなぁ)
告白されても答えが決まってる美郷は、そんなことを思っていた。
男子生徒「花咲さんが好きです!まずは友達からでもいいから、付き合ってください!」
美郷(友達からかぁ……)
美郷「友達になってくれるのはとっても嬉しいんだけど、付き合うのは……」
男子生徒「ほら、俺、そこそこイケてるし、勉強も運動もできるし!ゆっくりでいいからさ!」
今日の告白相手は、なかなかしぶとかった。
美郷(いつもなら断ればすぐに食い下がってくれるのに)
しつこい相手に困る美郷。
男子生徒は美郷に迫ってきて、体に触れようとする。
怜「ねぇ、困ってんじゃん」
男子生徒の腕を掴んで静止させる怜。
怜の登場に驚く美郷。
怜「自分たちの賭け事に花咲さん使うのは良くないんじゃない?」
美郷(賭け事?)
男子生徒「……なっ!」
怜「さっき廊下で聞いちゃったんだよね。誰が花咲さんを落とせるかって?バカじゃないの」
男子生徒「ちっ。じゃあね、花咲さん」
男子生徒は悔しそうに舌打ちをして、隠れていた友達と共に去って行った。
怜「大丈夫?」
美郷「う、うん。ありがとう」
同じクラスではあったけれど、怜と話したのはこれが初めてだった。
桐嶋 怜はみんなの王子様。
そう呼ばれているくらいイケメンだと人気な人。
そんな人とこうして会話をしているのは夢のよう。
怜「告白って面倒くさいよね」
美郷「えっ?」
怜の口から予想外の言葉が飛び出した。
いつも笑顔で爽やかな人だったのに。
美郷(今目の前にいる人は、本当に桐嶋くん……?)
怜「だってさ、こっちは付き合う気なんてないのに勝手に告白されて、毎回断るなんて。花咲さんも面倒くさいと思わない?」
美郷「えっと私は……」
怜「あ、そうだ。いいこと考えた」
答えに困る美郷。
グッと顔を美郷の耳元に引き寄せて呟く。
怜「俺と付き合って」
美郷(ええっ!?)
予想外の出来事に驚きが隠せなかった。
美郷(まるで少女漫画のヒロインみたい……ってそうじゃなくて!私の高校生活どうなっちゃうの!?)
私、花咲 美郷は、根っからの少女漫画好き。
小学生の頃から愛読書と言えば少女漫画で、ずっと可愛い少女漫画のヒロインに憧れていた。
中学生の美郷は、厳しい校則にしっかり従う芋女だった。
眉を整えたこともなければ、メイクなんてしたこともないし、スカートの丈も校則通り膝下丈。
それなりに友達はいたものの、パッとしない学校生活を送っていた。
中学校を卒業して、来月から高校生。
そんな時、ふと少女漫画のフレーズが気になった。
“高校デビュー”
美郷「してみよっかな、高校デビュー」
ころんとバニラ飴を口の中で転がす。
そんな一言から、美郷の高校デビューは始まった。
最近は本当に便利な世の中で、メイク動画を無料でたくさん見ることができる。
思い立った美郷は、動画サイトやSNSを漁りまくり、メイク術とファッションを必死に勉強した。
美郷「ふっふ、ふーん」
メイクは練習通りバッチリで、長い髪もふんわりと巻いてみた。
もちろんスカートの丈は膝下じゃなくて、膝上丈。
気持ちが高ぶっている美郷は、鼻歌を歌いながら登校していた。
今日は、高校の入学式。
美郷の通う高校は、全寮制。
生まれ育った田舎を出て、都会の学校に行くのが夢だった。
自立した生活を送ってみたいと両親に頼み込み、全寮制の高校に進学させてもらった。
そのため、荷物は多い。
ほとんどは宅配で送ったけれど、多少の着替え類が入ったキャリーバッグを引いて、学校へと向かった。
○学校・学生寮(朝)
生徒会役員「新入生の皆さんはこちらへどうぞ」
学生寮に着くと中へと案内された。
受付のようなところで名前の確認をされる。
美郷「花咲 美郷です」
生徒会役員「花咲 美郷さんですね。ご入学おめでとうございます」
美郷「ありがとうございます」
生徒会役員「花咲さんのお部屋は3階の315号室です。この後入学式があるので、部屋に荷物を置いたら、体育館に移動してください」
丁寧な説明を受けてから、部屋へと向かう。
○学生寮・美郷の部屋(朝)
ウキウキしながら部屋の中へと入る。
ぐるりと部屋の中を見渡す。
美郷(今日からここに住むのか)
部屋の中には、シングルサイズのベッドがひとつ。
机と椅子が隣に並び、収納に便利な大きめのクローゼットがあった。
美郷(実家の部屋よりも住み心地が良さそう)
入学式まであまり時間がなかったため、荷物はそのまま部屋に放置して、体育館へと向かうことにした。
○学生寮・廊下(朝)
来実「あっ」
廊下へ出ると、隣の部屋からちょうど同じタイミングで人が出てきた。
美郷と来実の目が合う。
美郷「あっ……」
来実「か、可愛い〜っ!」
美郷「わぁっ」
突然来実に抱きつかれる。
来実「突然ごめんねっ、可愛すぎてつい……」
美郷から離れた来実は申し訳なさそうにした。
驚きのあまり美郷は固まっている。
来実「私は隣の314号室の羽生 来実!良かったら友達になろう!」
背は美郷よりも少し低くて、お団子ヘアが特徴的な来実。
美郷「嬉しいっ!私でよければ」
隣の部屋同士仲良くなって、美郷と来実は一緒に体育館へ行く。
○体育館(朝)
吹奏楽の演奏で入場し、入学式が始まった。
新入生が立ち並ぶ体育館。
美郷(校長先生の話って、やっぱり退屈)
そう思いながら、遠くを見る美郷。
校歌吹奏、生徒会長からの話、式は刻々と過ぎていった。
空気がザワついたのは新入生代表挨拶の時。
美郷は退屈なあまり、欠伸をして瞼が閉じそうになっていたが、そのざわつきで目が覚めた。
美郷(何事?)
そうみんなの視線の先を見ると、1人の男子生徒が登壇していた。
男子生徒は、演台の前に立ち、一礼する。
女子生徒1「ねぇ、見て。めっちゃかっこよくない?」
女子生徒2「超イケメン!やばくない!?」
そんな声が周りでは行き交っていた。
美郷(確かにすごく顔が整っていてイケメン)
遊ばれている黒髪がとっても似合っていて、スっとした鼻筋が綺麗な顔立ちの男子生徒。
怜「春の息吹が感じられる今日───」
オマケに声までイケメンだ。
周りの女子生徒は、この一瞬で恋に落ちてしまったようだった。
怜「───以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます。1年1組、桐嶋 怜」
美郷(1年1組かぁ。同じクラスだ)
この時はそれくらいにしか思っていなかった。
イケメンな桐嶋 怜よりも、これから始まる新生活にウキウキワクワクが止まらなかった。
初日から友達もできて、美郷の高校デビューも絶好調。
これから起こる出来事に大きな期待を寄せていた。
○学生寮・美郷の部屋(放課後)
そんな高校生活もあっという間に2ヶ月が過ぎた。
高校デビューは大成功。
来実「美郷ちゃんはモテモテだねー!」
放課後、美郷の部屋で来実とお茶会。
そんな今日も来実とお茶会をする前に、美郷は男子から呼び出しされていた。
○(回想)学校・裏庭
男子生徒「花咲さん、来てくれてありがとう」
美郷「ううん、話があるって言ってたけどどうしたの?」
夏が近づき、青々とした葉がつく立派な木の下で、男子生徒は照れくさそうにする。
この手の告白にはもう慣れた。
無事に高校デビューに成功した美郷は、今まで彼氏は愚から男子とも関わりがなかったのに、毎週のように告白されるようになっていた。
男子生徒「実は花咲さんに一目惚れして……良かったら俺と付き合ってください!」
男子生徒は頭を深々と下げて、手を差し出してくる。
美郷「気持ちは嬉しい!ありがとう!でも───」
(回想終了)
○学生寮・美郷の部屋(放課後)
来実「でも、なんで彼氏作らないの?」
美郷「うーん、好きでもないのに付き合うのはなって思っちゃって……」
来実「美郷ちゃん真面目すぎ」
美郷は、誰の告白も受けずに振り続け、“高嶺の花”と言われていた。
お菓子を片手に、一番大好きな飲み物であるバニララテを飲む。
美郷「でも断り続けるのもなんか胸が痛くて……」
美郷(せっかく想いを伝えてくれているのに、ごめんなさいと何度も伝えるのは申し訳ない気持ちになる)
来実「もう、優しすぎるんだから!そんなところが好きなんだけどねー」
来実は優しく微笑んで、お菓子をパクリと口に入れた。
来実「美郷ちゃんに素敵な彼氏ができるように応援してる!」
美郷「ありがとう、来実ちゃん」
○学校・裏庭(放課後)
別の日。また美郷は告白に呼び出されていた。
男子生徒「急に呼び出してごめんね」
そんな男子生徒の後ろに、友達であろう人たちが隠れているのが見えた。
美郷(告白を見守りに来てるのかなぁ)
告白されても答えが決まってる美郷は、そんなことを思っていた。
男子生徒「花咲さんが好きです!まずは友達からでもいいから、付き合ってください!」
美郷(友達からかぁ……)
美郷「友達になってくれるのはとっても嬉しいんだけど、付き合うのは……」
男子生徒「ほら、俺、そこそこイケてるし、勉強も運動もできるし!ゆっくりでいいからさ!」
今日の告白相手は、なかなかしぶとかった。
美郷(いつもなら断ればすぐに食い下がってくれるのに)
しつこい相手に困る美郷。
男子生徒は美郷に迫ってきて、体に触れようとする。
怜「ねぇ、困ってんじゃん」
男子生徒の腕を掴んで静止させる怜。
怜の登場に驚く美郷。
怜「自分たちの賭け事に花咲さん使うのは良くないんじゃない?」
美郷(賭け事?)
男子生徒「……なっ!」
怜「さっき廊下で聞いちゃったんだよね。誰が花咲さんを落とせるかって?バカじゃないの」
男子生徒「ちっ。じゃあね、花咲さん」
男子生徒は悔しそうに舌打ちをして、隠れていた友達と共に去って行った。
怜「大丈夫?」
美郷「う、うん。ありがとう」
同じクラスではあったけれど、怜と話したのはこれが初めてだった。
桐嶋 怜はみんなの王子様。
そう呼ばれているくらいイケメンだと人気な人。
そんな人とこうして会話をしているのは夢のよう。
怜「告白って面倒くさいよね」
美郷「えっ?」
怜の口から予想外の言葉が飛び出した。
いつも笑顔で爽やかな人だったのに。
美郷(今目の前にいる人は、本当に桐嶋くん……?)
怜「だってさ、こっちは付き合う気なんてないのに勝手に告白されて、毎回断るなんて。花咲さんも面倒くさいと思わない?」
美郷「えっと私は……」
怜「あ、そうだ。いいこと考えた」
答えに困る美郷。
グッと顔を美郷の耳元に引き寄せて呟く。
怜「俺と付き合って」
美郷(ええっ!?)
予想外の出来事に驚きが隠せなかった。
美郷(まるで少女漫画のヒロインみたい……ってそうじゃなくて!私の高校生活どうなっちゃうの!?)
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