バニラな恋に恋焦がれて
その笑顔、反則です
○学校・教室(授業中)
現代文の授業中。
先生が書いていく板書をノートに写していく。
ついこの間、衣替えがあって、冬服から夏服に変わった。
ワイシャツにニットベスト。
ブレザーがないからゴワゴワしなくて動きやすい。
怜と付き合うフリを始めてから、ピタリと告白されることはなくなった。
美郷(桐嶋くんの力ってすごいんだなぁ……そういえば、桐嶋くんも告白されてるのをあまり見なくなったような気がする。)
付き合うフリはどうかと思うけれど、せっかくしてくれる告白を断るという罪悪感はなくなって、スッキリとした気持ちでいた。
○帰り道(放課後)
あの日から帰り道は毎日怜と一緒。
女子生徒1「桐嶋くんと花咲さんカップル!」
女子生徒2「美男美女で今日もお似合いだね」
そんな噂も流れ始め、みんなの憧れのカップルになっていった。
美郷(全部嘘なのに……これじゃますます別れられない)
美郷は心の中で罪悪感も芽生えていた。
美郷(桐嶋くんはなんとも思わないのかな?)
そう思い、隣にいる怜を見る。
怜「なんかついてる?」
美郷「ううんっ、なにもっ!」
キスされそうになったあの日から、まともに怜の顔を見ることができない。
目が合いそうになると、パッと離してしまう。
怜「そういや、もうすぐテストだな」
美郷「あっ、そうだっけ」
そろそろ中間テストの時期。
そういえば、ついこの間、テスト範囲の書かれたプリントが配布されたような気がする。
美郷「嫌だなぁ、勉強」
怜「苦手なの?」
美郷「勉強は苦手……特に数学と英語」
怜「なら、一緒にする?」
美郷「え、本当に?」
美郷(まさか、桐嶋くんから誘われるなんて)
この学校の入学式の新入生代表挨拶は、入学試験でトップだった生徒が任せられる。
そんな新入生代表挨拶をしていた怜は、もちろん頭がいいはず。
美郷(そんな桐嶋くんが教えてくれるなら……)
美郷「お願いしますっ!」
学校での成績は全て実家に郵送で送られる。
自分のわがままで学生寮のある高校に入学させてもらったのに、悪い成績なんて見せるわけにはいかない。
怜「じゃあ後で俺の部屋に来て」
こうして、怜と勉強会の予定ができた。
○学生寮・怜の部屋の前(放課後)
自分の部屋以外には、来実の部屋にしか行ったことがない。
怜の部屋は420号室。
美郷(なんかドキドキする……)
怜の部屋の前で深呼吸をした。
部屋のドアをノックする。
怜「はい」
部屋の中から怜の声が聞こえた。
そしてすぐにドアが開く。
怜「ようこそ」
美郷「お邪魔します」
自分の部屋と同じ間取りなはずなのに、雰囲気が違ってドキドキする。
美郷(男の子の部屋ってこんな感じなんだ)
異性の部屋に入るのは、もちろん初めて。
とても緊張する。
どうしたらいいかわからず、申し訳なさそうに部屋の隅に座った。
怜「なにしてんの?こっち座んなよ」
美郷「う、うん」
机の前に座り直す美郷。
お茶をいれて持ってきた怜が、隣に座る。
怜「お茶しかないけど」
美郷「ど、どうぞおかまいなく……」
怜「はっ、まじで面白すぎ。そんな固くならなくていいから」
糸が切れたように笑い始める怜。
戸惑ったままの美郷。
怜「本当に男慣れしてねぇんだな」
美郷「……恥ずかしながら」
バレてしまったものは仕方がない。
それを認めるしかない。
怜「で、数学と英語がダメなんだっけ」
美郷「はい、そうです」
怜「だから、敬語やめろよ」
美郷「うん、ごめん」
怜「じゃあ数学からな」
美郷「……っ」
勉強を始めようと、怜が黒縁メガネをかける。
メガネ姿の怜にドキッとする美郷。
美郷(桐嶋くんって勉強する時メガネかけるんだ)
学校では私よりも席が後ろの桐嶋くん。
授業中の姿をちゃんと見たことがなかった。
美郷(桐嶋くんのメガネ姿、ちょっとかっこいいかも)
怜「なに?俺の顔になんかついてる?」
美郷「ううん!別に!なんでもない!」
美郷の顔を覗き込むように見る怜。
真っ直ぐな視線にドキドキしながら、慌てて平然を装う美郷。
怜「へぇー、俺に見惚れてたわけじゃないんだ」
美郷「えっ……」
美郷に距離を詰めていく怜。
美郷(な、なにっ)
膝がピッタリと重なる。
怜が美郷の髪に指を通す。
くすぐったくて、ピクリと体が反応する。
それが恥ずかしくて体が熱くなる。
怜「本当、美郷っていじめたくなる」
美郷「なっ」
怜「可愛いよね、美郷」
怜の瞳に美郷が映る。
美郷(こうやってみんな桐嶋くんにやられていくんだ……)
現に私の心臓もドキドキうるさい。
美郷「桐嶋くん、やめっ」
怜「やだ。もっといじめたい」
美郷「桐嶋くんっ!ほ、ほら、勉強しなきゃ……」
怜「勉強なんて後にして俺と遊ぼう」
美郷「あっ」
右手に指を絡まれて、後ろに押し倒される美郷。
スローモーションに見えた。
世界が反転して、天井と怜が目に映る。
床に押し倒された美郷。
美郷(なに、これ……どうなってるの?)
美郷の思考は追いつかない。
怜「なーんてね。本当美郷気をつけた方がいいよ」
美郷は、怜に腕を引かれて体を起こされる。
美郷(またからかわれた)
美郷は怜にムッとする。
怜「ほら、勉強するんでしょ?どこがわかんないの?」
何事もなかったかのように接してくる怜。
美郷(私はドキドキも止まらないのに……桐嶋くんだけ余裕そうでずるい)
怜「ごめん、悪かったって」
美郷「桐嶋くんのバカっ」
怜「……っ」
潤んだ瞳で怜を見る美郷。
そんな瞳にドキッとする怜。
怜「本当、そういうところ……」(小声)
美郷「なに?」
怜「なんでもねぇよ。ほら、やるぞ」
それからやっと勉強を始めた。
一つ一つ丁寧に教えてくれる怜。
さすが入学試験をトップで合格した人。
本当に頭が良くて、教え方もとても上手。
あんなに授業では頭に入ってこなかったのに、怜の教え方だとスっと頭に入ってきた。
美郷「ありがとう、桐嶋くん」
怜「どういたしまして。また困ったら言って、教えるから」
それは私がニセだとしても彼女だから?
それとも────
フッと笑う怜に、ドキッとする美郷。
美郷(不意に見せる笑顔はずるい)
普段は意地悪でちょっぴり冷たい桐嶋くんなのに……
そんな笑顔、反則だよ。
現代文の授業中。
先生が書いていく板書をノートに写していく。
ついこの間、衣替えがあって、冬服から夏服に変わった。
ワイシャツにニットベスト。
ブレザーがないからゴワゴワしなくて動きやすい。
怜と付き合うフリを始めてから、ピタリと告白されることはなくなった。
美郷(桐嶋くんの力ってすごいんだなぁ……そういえば、桐嶋くんも告白されてるのをあまり見なくなったような気がする。)
付き合うフリはどうかと思うけれど、せっかくしてくれる告白を断るという罪悪感はなくなって、スッキリとした気持ちでいた。
○帰り道(放課後)
あの日から帰り道は毎日怜と一緒。
女子生徒1「桐嶋くんと花咲さんカップル!」
女子生徒2「美男美女で今日もお似合いだね」
そんな噂も流れ始め、みんなの憧れのカップルになっていった。
美郷(全部嘘なのに……これじゃますます別れられない)
美郷は心の中で罪悪感も芽生えていた。
美郷(桐嶋くんはなんとも思わないのかな?)
そう思い、隣にいる怜を見る。
怜「なんかついてる?」
美郷「ううんっ、なにもっ!」
キスされそうになったあの日から、まともに怜の顔を見ることができない。
目が合いそうになると、パッと離してしまう。
怜「そういや、もうすぐテストだな」
美郷「あっ、そうだっけ」
そろそろ中間テストの時期。
そういえば、ついこの間、テスト範囲の書かれたプリントが配布されたような気がする。
美郷「嫌だなぁ、勉強」
怜「苦手なの?」
美郷「勉強は苦手……特に数学と英語」
怜「なら、一緒にする?」
美郷「え、本当に?」
美郷(まさか、桐嶋くんから誘われるなんて)
この学校の入学式の新入生代表挨拶は、入学試験でトップだった生徒が任せられる。
そんな新入生代表挨拶をしていた怜は、もちろん頭がいいはず。
美郷(そんな桐嶋くんが教えてくれるなら……)
美郷「お願いしますっ!」
学校での成績は全て実家に郵送で送られる。
自分のわがままで学生寮のある高校に入学させてもらったのに、悪い成績なんて見せるわけにはいかない。
怜「じゃあ後で俺の部屋に来て」
こうして、怜と勉強会の予定ができた。
○学生寮・怜の部屋の前(放課後)
自分の部屋以外には、来実の部屋にしか行ったことがない。
怜の部屋は420号室。
美郷(なんかドキドキする……)
怜の部屋の前で深呼吸をした。
部屋のドアをノックする。
怜「はい」
部屋の中から怜の声が聞こえた。
そしてすぐにドアが開く。
怜「ようこそ」
美郷「お邪魔します」
自分の部屋と同じ間取りなはずなのに、雰囲気が違ってドキドキする。
美郷(男の子の部屋ってこんな感じなんだ)
異性の部屋に入るのは、もちろん初めて。
とても緊張する。
どうしたらいいかわからず、申し訳なさそうに部屋の隅に座った。
怜「なにしてんの?こっち座んなよ」
美郷「う、うん」
机の前に座り直す美郷。
お茶をいれて持ってきた怜が、隣に座る。
怜「お茶しかないけど」
美郷「ど、どうぞおかまいなく……」
怜「はっ、まじで面白すぎ。そんな固くならなくていいから」
糸が切れたように笑い始める怜。
戸惑ったままの美郷。
怜「本当に男慣れしてねぇんだな」
美郷「……恥ずかしながら」
バレてしまったものは仕方がない。
それを認めるしかない。
怜「で、数学と英語がダメなんだっけ」
美郷「はい、そうです」
怜「だから、敬語やめろよ」
美郷「うん、ごめん」
怜「じゃあ数学からな」
美郷「……っ」
勉強を始めようと、怜が黒縁メガネをかける。
メガネ姿の怜にドキッとする美郷。
美郷(桐嶋くんって勉強する時メガネかけるんだ)
学校では私よりも席が後ろの桐嶋くん。
授業中の姿をちゃんと見たことがなかった。
美郷(桐嶋くんのメガネ姿、ちょっとかっこいいかも)
怜「なに?俺の顔になんかついてる?」
美郷「ううん!別に!なんでもない!」
美郷の顔を覗き込むように見る怜。
真っ直ぐな視線にドキドキしながら、慌てて平然を装う美郷。
怜「へぇー、俺に見惚れてたわけじゃないんだ」
美郷「えっ……」
美郷に距離を詰めていく怜。
美郷(な、なにっ)
膝がピッタリと重なる。
怜が美郷の髪に指を通す。
くすぐったくて、ピクリと体が反応する。
それが恥ずかしくて体が熱くなる。
怜「本当、美郷っていじめたくなる」
美郷「なっ」
怜「可愛いよね、美郷」
怜の瞳に美郷が映る。
美郷(こうやってみんな桐嶋くんにやられていくんだ……)
現に私の心臓もドキドキうるさい。
美郷「桐嶋くん、やめっ」
怜「やだ。もっといじめたい」
美郷「桐嶋くんっ!ほ、ほら、勉強しなきゃ……」
怜「勉強なんて後にして俺と遊ぼう」
美郷「あっ」
右手に指を絡まれて、後ろに押し倒される美郷。
スローモーションに見えた。
世界が反転して、天井と怜が目に映る。
床に押し倒された美郷。
美郷(なに、これ……どうなってるの?)
美郷の思考は追いつかない。
怜「なーんてね。本当美郷気をつけた方がいいよ」
美郷は、怜に腕を引かれて体を起こされる。
美郷(またからかわれた)
美郷は怜にムッとする。
怜「ほら、勉強するんでしょ?どこがわかんないの?」
何事もなかったかのように接してくる怜。
美郷(私はドキドキも止まらないのに……桐嶋くんだけ余裕そうでずるい)
怜「ごめん、悪かったって」
美郷「桐嶋くんのバカっ」
怜「……っ」
潤んだ瞳で怜を見る美郷。
そんな瞳にドキッとする怜。
怜「本当、そういうところ……」(小声)
美郷「なに?」
怜「なんでもねぇよ。ほら、やるぞ」
それからやっと勉強を始めた。
一つ一つ丁寧に教えてくれる怜。
さすが入学試験をトップで合格した人。
本当に頭が良くて、教え方もとても上手。
あんなに授業では頭に入ってこなかったのに、怜の教え方だとスっと頭に入ってきた。
美郷「ありがとう、桐嶋くん」
怜「どういたしまして。また困ったら言って、教えるから」
それは私がニセだとしても彼女だから?
それとも────
フッと笑う怜に、ドキッとする美郷。
美郷(不意に見せる笑顔はずるい)
普段は意地悪でちょっぴり冷たい桐嶋くんなのに……
そんな笑顔、反則だよ。