バニラな恋に恋焦がれて
気づいた気持ち
○学校・教室(朝)

体育祭が終わり、通常授業に戻る。
夏休みが近づいてきていた。
そんなある日、教室中にはある噂が流れていた。

女子生徒1「ねぇ、あの噂って本当?」
女子生徒2「噂って、花咲さんと桐嶋くんの話?」
女子生徒1「そうそう。別れたっぽいって」
女子生徒3「それ聞いた!なんか本当っぽいよね」
女子生徒2「本人に聞いてみてよ」
女子生徒1「え、無理だよー」

そんな噂が流れてしまったことにも理由がある。

来実「おはよー、美郷ちゃん」
美郷「おはよ、来実ちゃん」
来実「今日も美郷ちゃんたちの噂で持ち切りだね」
美郷「うん……でもどうしたらいいかわからなくって」
来実「そうだよねぇ……避けられてるんじゃどうしようもないもんね」

そう。私は今、桐嶋くんに避けられている。
それが始まったのは体育祭が終わったあとすぐのことだった。
あのキスがあったあとから、桐嶋くんに避けられるようになってしまった。

いつも一緒に帰っていた怜と美郷。
それも最近はバラバラになり、美郷が怜に声をかけようとすると、避けるようにどこかへ行ってしまう。
そのことに美郷は悩んでいた。
そして、また違う悩みも出てきている。


○(回想)裏庭(放課後)

男子生徒「花咲さん、急に呼び出してごめんね。話したいことがあって」
美郷「うん、全然いいよ。どうしたの?」
男子生徒「実はずっと前から花咲さんのことが好きで……付き合ってもらえませんか?」
美郷「えっと、その……」
男子生徒「花咲さんと桐嶋は別れたって聞いたんだけど」
美郷「その噂なんだけど、違くて……」
男子生徒「別れてないの?喧嘩中とか?」
美郷「うーん、まぁ、そんな感じで……」
男子生徒「俺なら、そんな顔させないよ?」
美郷「ありがとう。でも、ごめんなさい」

(回想終了)


○学校・教室(朝)

そんな噂を聞いて、告白されることも増えてきた。
みんな噂を信じてやってくる。
その度、うやむやにして流していた。
喧嘩をしたわけではないと思う。
ただ、あの日からずっと桐嶋くんに避けられ続けている。

来実「ねぇ、今日放課後どっか行かない?」
美郷「放課後?」
来実「うん。気晴らしに行こうよ」
美郷「うん、行きたい」
来実「よし、決まりね!」

ちょうどチャイムが鳴り、来実は自分の席へと戻って行った。


○カフェ(放課後)

美郷は来実と放課後、カフェにやってきた。
ドライフラワーなんかが飾られていて、オシャレなカフェだった。

来実「最近ここで来たらしくてさ、来てみたかったんだよねー」
美郷「そうなんだ。オシャレですっごく可愛い」
来実「でしょー?美郷ちゃんも喜んでくれるかなって」
美郷「うん。連れてきてくれてとっても嬉しい!」
来実「美郷ちゃん、何飲む?」
美郷「うーん、じゃあこれで!」

それぞれ注文して、しばらくしてから注文したドリンクが届いた。
来実はカフェモカ。
美郷はバニラフラペチーノを頼んだ。

来実「美郷ちゃんってバニラ好きだよね?この間もバニラ味の飴舐めてたし」
美郷「そうなの、バニラが大好き」

アイスだって必ず選ぶものはバニラ。
ドリンクもバニラがあれば迷わず選ぶ。
生粋のバニラ好き。

来実「うん、バニラと言えば美郷ちゃんって感じ」
美郷「そう言われるのちょっと嬉しいかも」

店内は美郷たちのような学生で埋め尽くされていた。
それくらい今人気のカフェだった。

来実「それで、最近どうなの?進展あった?」

怜に避けられ始めてから、来実には相談していた。
保健室で何があったのかも、来実だけには話していた。

美郷「ううん、何も……」

美郷は首を横に振る。
怜に声をかけようとしても逃げられ、メッセージを送っても既読無視。
徹底的に避けられていた。

来実「美郷ちゃんたちって付き合うフリだったんでしょ?」
美郷「うん。桐嶋くんからそう言われて……」
来実「美郷ちゃんは桐嶋くんのことどう思ってるの?」
美郷「わ、私?」
来実「うん。桐嶋くんと付き合ってみてどう?今避けられててどんな気持ち?」

カフェモカを飲みながら、美郷をじっと見つめる来実。
美郷は視線を外して俯いた。

美郷(私は桐嶋くんのこと、どう思ってるんだろう。)

来実「桐嶋くんと一緒にいたりしてドキドキしたりすることない?」
美郷「それは……する、かも」

最初はなんとも思わなかった。
無理矢理人気者だった桐嶋くんと付き合うことになっちゃって、どうしたらいいかわからなかった。
でもそれから、近くにいる度にドキドキして、桐嶋くんのふとした笑顔だったり、仕草だったりにドキッとする。
胸の鼓動がうるさいくらいに大きくなる。

来実「桐嶋くんに避けられてて、嫌じゃない?」
美郷「いやだ。寂しいし、胸がキュッとなる」

避けられる度に胸が締め付けられる。
悲しくなる。
桐嶋くんとまた話したいと思う自分がいる。

来実「ねぇ、それってさ、もう好きってことじゃない?」
美郷「えっ?」
来実「ドキドキしちゃうんでしょ?避けられて辛いんでしょ?それってもう桐嶋くんのことが好きってことだよ」
美郷「私は桐嶋くんのことが好き……」
来実「そう」

美郷(そっか、私……)

気がついた途端に恥ずかしくなって、バニラフラペチーノを一気に飲んだ。

美郷「うっ……」

冷たいものを一気に飲んで、頭がキーンとする。

来実「もう、動揺しすぎだよ。まぁ、何となく私はわかってたけどね」
美郷「え、本当に?」
来実「うん。だんだんと桐嶋くんを見る目が変わってたもん」
美郷「そっか……」

美郷(改めて言われると恥ずかしい……)

来実「桐嶋くんにはその気持ち話さないの?」
美郷「えぇっ、無理だよ……」

美郷(緊張するし、おまけに今は避けられてるし……)

来実「でも、ちゃんと話さなきゃだよ!お互いに黙り込んでたらこのまますれ違ったままだよ?」
美郷「そうだけど……」
来実「美郷ちゃん、スマホ貸して?」
美郷「うん……?」

そう言われて、美郷は来実にスマートフォンを渡す。
来実は何やら操作をしていて、すぐに返された。

来実「これでオッケー」
美郷「今、何したの?」
来実「これから桐嶋くんの部屋に行くねってメッセージ送った」
美郷「来実ちゃんっ!?ちょっと何して……」

美郷(来実ちゃんってば、なんてことを……!)

来実「そうでもしないと美郷ちゃん、ちゃんと桐嶋くんと話さないでしょ?」
美郷「そ、そうかもしれないけど……」

美郷(確かにそれは図星。このまま私は何もしなかったと思う。)

来実「頑張って!結果がどうであっても私がついてるから」
美郷「う、うん……」

そうして、美郷は桐嶋くんの部屋へと行くことになった。
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