バニラな恋に恋焦がれて
初めての気持ちに戸惑って
○学校・教室(休み時間)
突然怜の席にやって来た駿介。
駿介が後ろから怜の首に腕を回して肩を組む。
駿介「よお、怜」
怜「んだよ、駿介」
駿介「おぉ、こわいこわい。みんなの王子様」
怜「それ以上言ったらぶん殴る」
駿介「ごめんって」
駿介は全然申し訳なさそうな顔で、前の席に座る。
そんな駿介を見て、怜は大きなため息をついた。
駿介「どうしたんだよ、最近。怜らしくねぇじゃん」
駿介は突然そんな話を始めた。
怜「俺がらしくないって?」
駿介「あぁ。ずっとしかめっ面してる。シワできるぞ」
怜「あのなぁ」
駿介「本気で言ってんの」
ふざけんなと言おうとしたけれど、それは駿介によって止められてしまった。
駿介は真面目そうな顔をしていた。
駿介「何か悩んでんだろ?」
怜「俺が?」
駿介「そうだよ。最近花咲さんとも一緒に居ないし……」
怜「美郷は関係ない──」
駿介「お前、嘘つく時鼻触るよな」
怜「……っ」
あの保健室での出来事があってから、俺は美郷を避け続けている。
今まで反応が面白くてからかっていたことはあったけれど、本気でしたことはなかった。
あの日は、気づいたらしてしまっていた。
俺自身も驚きが隠せなかった。
駿介「花咲さんと何があったんだよ」
怜「ここで話すことじゃない」
駿介「じゃ、放課後お前の部屋行くわ。逃げんじゃねーぞ」
怜「別に逃げることなんか」
駿介「絶対だからな」
そう約束を取り付けられて、駿介はチャイムが鳴ると同時に席へ戻って行った。
○学生寮・怜の部屋(放課後)
駿介「よお、怜」
駿介は休み時間と同じテンションで部屋にやって来た。
ドアを開けると、その隙間からニカッと笑う駿介。
ハイテンションな駿介に怜はため息を漏らした。
怜「入れよ」
駿介「お邪魔しまーす」
駿介は気を使う様子もなく、ドカッと部屋の真ん中に座った。
怜「ちょっとは遠慮しろよ」
駿介「俺とお前の仲じゃそんなのいらねーだろ」
怜「まぁな」
怜は「なんもねぇけど」と駿介にお茶をいれてあげた。
怜「で、なんだよ。わざわざ俺の部屋まで来てする話って」
駿介「お前もわかってるだろ?花咲さんの話だよ」
怜「……」
何度か駿介に「今日は花咲さんと帰らないのか?」なんて聞かれたけれどずっと聞き流していた。
美郷の話をすることは、避け続けていた。
駿介「花咲さんと何があったんだよ」
教室にいた時と同じ質問をされる。
怜「キスした」
駿介「は?」
怜「だから、美郷にキスした」
駿介「だからなんだって言うんだよ、付き合ってんならキスのひとつやふたつするだろ?」
怜「付き合ってない。付き合ってるフリしてるだけ」
面倒くさいから、駿介にも付き合っているフリをしていることは話していなかった。
怜のカミングアウトに、駿介は驚いていた。
駿介「ずっと嘘ついてたのかよ」
怜「お前、うっかり話しそうじゃん」
駿介「信用ねーなぁ。まぁ、そんなことはいいんだけどさ、本当に付き合ってないやつにキスしたから戸惑ってんのかよ」
怜「……」
駿介「図星って顔してんな」
怜「愛とか恋とかめんどうくせーし、そんなバカげたことくだらない」
駿介「怜の言いたいことはわかるけどよ」
怜の家庭事情を駿介は知っている。
複雑な家庭事情のせいで怜がそういう気持ちを持っていることも知っている。
駿介「だけどさ、また毎日のように告白されてる花咲さん見て、怜は何も思わねーの?」
俺が美郷を避け始めてから、俺たちが別れたという根も葉もない噂が流れていた。
そうしているうちに、俺も告白されることも増えたが、美郷も同じくそうだった。
教室に美郷を呼びに来る男子の姿を見る度に胸がズキっとする。
今すぐに美郷を引き止めたくなる。
何も出来ない俺自身に、イラッとする。
もしかしたらそのまま付き合ってしまうんじゃないかと心配している。
駿介「いい加減自分の気持ちに気づけよ」
怜「気づいてるよ。でも、どうしたらいいかわかんねぇの」
駿介「そんなのちゃんと想い伝えるしかねぇじゃん」
気づいてる。
自分の気持ちになんて、ずっと前から。
他の女子のように俺に擦り寄ってこない美郷を面白い奴だと思ったその時から、俺は確実に美郷に惹かれていた。
ずっと気づかないフリをしていた。
駿介「確かに愛とか恋とかは壊れやすいかもしれない。けど、伝えられる時に伝えねぇと掴めるものも掴めねぇよ」
怜「……」
駿介「花咲さんのこと、誰にも取られたくねぇんだろ?」
誰にも渡したくない。
今すぐにでも俺だけのものにしたい。
するとまもなく、スマートフォンが鳴った。
メッセージの送り主は、美郷だった。
駿介「誰から?」
怜「美郷」
駿介「なんて?」
怜「今から来るって」
駿介「ちょうどいいじゃん。ちゃんと話せよ」
怜「……あぁ」
駿介が帰って間もなくして、ドアをノックする音が聞こえた。
怜「はい」
美郷「み、美郷です……」
怜「入れよ」
ドアを開けて、美郷を部屋に招き入れた。
突然怜の席にやって来た駿介。
駿介が後ろから怜の首に腕を回して肩を組む。
駿介「よお、怜」
怜「んだよ、駿介」
駿介「おぉ、こわいこわい。みんなの王子様」
怜「それ以上言ったらぶん殴る」
駿介「ごめんって」
駿介は全然申し訳なさそうな顔で、前の席に座る。
そんな駿介を見て、怜は大きなため息をついた。
駿介「どうしたんだよ、最近。怜らしくねぇじゃん」
駿介は突然そんな話を始めた。
怜「俺がらしくないって?」
駿介「あぁ。ずっとしかめっ面してる。シワできるぞ」
怜「あのなぁ」
駿介「本気で言ってんの」
ふざけんなと言おうとしたけれど、それは駿介によって止められてしまった。
駿介は真面目そうな顔をしていた。
駿介「何か悩んでんだろ?」
怜「俺が?」
駿介「そうだよ。最近花咲さんとも一緒に居ないし……」
怜「美郷は関係ない──」
駿介「お前、嘘つく時鼻触るよな」
怜「……っ」
あの保健室での出来事があってから、俺は美郷を避け続けている。
今まで反応が面白くてからかっていたことはあったけれど、本気でしたことはなかった。
あの日は、気づいたらしてしまっていた。
俺自身も驚きが隠せなかった。
駿介「花咲さんと何があったんだよ」
怜「ここで話すことじゃない」
駿介「じゃ、放課後お前の部屋行くわ。逃げんじゃねーぞ」
怜「別に逃げることなんか」
駿介「絶対だからな」
そう約束を取り付けられて、駿介はチャイムが鳴ると同時に席へ戻って行った。
○学生寮・怜の部屋(放課後)
駿介「よお、怜」
駿介は休み時間と同じテンションで部屋にやって来た。
ドアを開けると、その隙間からニカッと笑う駿介。
ハイテンションな駿介に怜はため息を漏らした。
怜「入れよ」
駿介「お邪魔しまーす」
駿介は気を使う様子もなく、ドカッと部屋の真ん中に座った。
怜「ちょっとは遠慮しろよ」
駿介「俺とお前の仲じゃそんなのいらねーだろ」
怜「まぁな」
怜は「なんもねぇけど」と駿介にお茶をいれてあげた。
怜「で、なんだよ。わざわざ俺の部屋まで来てする話って」
駿介「お前もわかってるだろ?花咲さんの話だよ」
怜「……」
何度か駿介に「今日は花咲さんと帰らないのか?」なんて聞かれたけれどずっと聞き流していた。
美郷の話をすることは、避け続けていた。
駿介「花咲さんと何があったんだよ」
教室にいた時と同じ質問をされる。
怜「キスした」
駿介「は?」
怜「だから、美郷にキスした」
駿介「だからなんだって言うんだよ、付き合ってんならキスのひとつやふたつするだろ?」
怜「付き合ってない。付き合ってるフリしてるだけ」
面倒くさいから、駿介にも付き合っているフリをしていることは話していなかった。
怜のカミングアウトに、駿介は驚いていた。
駿介「ずっと嘘ついてたのかよ」
怜「お前、うっかり話しそうじゃん」
駿介「信用ねーなぁ。まぁ、そんなことはいいんだけどさ、本当に付き合ってないやつにキスしたから戸惑ってんのかよ」
怜「……」
駿介「図星って顔してんな」
怜「愛とか恋とかめんどうくせーし、そんなバカげたことくだらない」
駿介「怜の言いたいことはわかるけどよ」
怜の家庭事情を駿介は知っている。
複雑な家庭事情のせいで怜がそういう気持ちを持っていることも知っている。
駿介「だけどさ、また毎日のように告白されてる花咲さん見て、怜は何も思わねーの?」
俺が美郷を避け始めてから、俺たちが別れたという根も葉もない噂が流れていた。
そうしているうちに、俺も告白されることも増えたが、美郷も同じくそうだった。
教室に美郷を呼びに来る男子の姿を見る度に胸がズキっとする。
今すぐに美郷を引き止めたくなる。
何も出来ない俺自身に、イラッとする。
もしかしたらそのまま付き合ってしまうんじゃないかと心配している。
駿介「いい加減自分の気持ちに気づけよ」
怜「気づいてるよ。でも、どうしたらいいかわかんねぇの」
駿介「そんなのちゃんと想い伝えるしかねぇじゃん」
気づいてる。
自分の気持ちになんて、ずっと前から。
他の女子のように俺に擦り寄ってこない美郷を面白い奴だと思ったその時から、俺は確実に美郷に惹かれていた。
ずっと気づかないフリをしていた。
駿介「確かに愛とか恋とかは壊れやすいかもしれない。けど、伝えられる時に伝えねぇと掴めるものも掴めねぇよ」
怜「……」
駿介「花咲さんのこと、誰にも取られたくねぇんだろ?」
誰にも渡したくない。
今すぐにでも俺だけのものにしたい。
するとまもなく、スマートフォンが鳴った。
メッセージの送り主は、美郷だった。
駿介「誰から?」
怜「美郷」
駿介「なんて?」
怜「今から来るって」
駿介「ちょうどいいじゃん。ちゃんと話せよ」
怜「……あぁ」
駿介が帰って間もなくして、ドアをノックする音が聞こえた。
怜「はい」
美郷「み、美郷です……」
怜「入れよ」
ドアを開けて、美郷を部屋に招き入れた。