Filigran.
試験は始まってしまえば一瞬で終わる。
今回は古文で「ここが出るだろう」という予想を的中させられた。
美花は心底嬉しそうに「全部埋めた」と報告してくれたし、
3組からほっくんが走ってきて、
「ゆき!お前飲みたいジュース決めとけ」と叫んでは足早に去っていったから、
多分上手くいったんだろうと思う。
そんなこんなで試験も無事終わり、
今日は弓弦君と一緒に帰る日だ。
あれから2週間も会っていないから、
なんだかドキドキしてしまう。
時計台に到着して、ふと今度は本当に弓弦君がいないことに気が付く。
私の方が早く到着したんだな、待たせなくてよかった。
と思っていると、
ふと向こうからジャージ姿の人が歩いてくるのが見える。
「…雪乃ごめん、待たせた」
ええぇ、弓弦君のジャージ姿…。
そろそろ6月なのに上下長袖だけれど、
上着のチャックはそのくらい開ける派なんですね、
とファンからしたら垂涎の的な情報を得てしまった。
私が彼のジャージ姿をジッと見ていると、
「…あぁ、そうこれ」と言って自身の着るジャージを指さして、
「このことについて話したかった」と言うから、
一体何のことだろうと気になってしまう。
二人で並んで歩きながら、
彼はその話を切り出した。
「前に来てほしいイベントがあるって言ったんだけど」
「それは、うちの学校の体育祭のこと」
そうやって話す彼に、
なるほど、私の学校は10月に文化祭と体育祭を同時にするけれど、
弓弦君の学校はもっと早くにするのかと頷く。
…あれ、来てほしいって言った?
私の頭が混乱している中、
彼は掻い摘んで分かりやすく話してくれた。