Filigran.






「…ふふ、驚いちゃうよね。しかも予約名が『センヤ様』って、本人がするんだってびっくりしちゃった。」


その言葉に追い打ちをかけられて、さらに頭の中には無数の『?』が浮かんでは踊り狂う。




ってことは、弓弦君は確定で来てしまう…?




固まって動かなくなってしまった私に、坂吉先輩はあわあわと困惑しだして



「大丈夫?びっくりが許容量超えちゃった?」と不安げに眉を垂れさせている。






そこで、「いけない堪えなければ」と正気を取り戻した私は、


何とかその言葉を口に出した。



「あの、私その日どうしても外せない用事がありまして…」



今までバイト皆勤賞でやってきた私だけれど、流石に決意した。




「その日のバイト出られないんですよね…。」




嘘です、私の予定なんて弓弦君の応援くらいしかないです。


それも無くなった今、どう理由をつけて外に出ようか悩むくらいです。




それでも、それでも。




最後に推しに会いたくないと思って涙をのんで、



ライブも握手会も行かなかったんだから。






至近距離で料理を運びに行くわけには、



いかないんです…。


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