Filigran.


「雪乃、どうだった?」


「…素敵でした」



ステージが終わってジャージに着替えて戻ってきた三人を迎える。


私の言葉に嬉しそうに微笑む弓弦君を見て、また一つ愛しいが募った。




「よっしゃ~お昼ご飯食べよ~!」と天海君が叫ぶと、


「聖生君も一緒食べましょ」と誘う新條君の声がする。



「俺もいいの?あ、弓弦の姫だ」


プレハブに入ってきたのは中性的な顔立ちで可愛い印象が強いながらも、


グループの最年長にしてリーダーの日野聖生君だ。


私と目が合った瞬間に「姫!」と呼んでくる。




「はじめまして、あの姫って何ですか?」


さっきからやたら姫と呼ばれるけれど、ずっと気になっていた。


「だって名前で呼んだら弓弦が怒るから。」


「あと初めましてじゃないの知ってるよ、ライブの後も握手会の後も弓弦が…」



そうやって何かを話し始めた日野さんに、


「聖生君やめてください」と言って弓弦君が苦そうな顔で止めていた。







あれ、私推しグループに囲まれてご飯食べてる。


しかも一人はもう芸能界引退しているから、ほんとうにレアな場所だ。





…まともに考えたら倒れちゃうし、まぁいっか。

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