Filigran.
「じゃあ、俺最後の種目に出るから」
「…はい、応援してます」
「俺の上着持っててくれる?」
「もちろん」
そういって私からしたら随分大きい上着を預かる。
「これも」と渡されたのはハチマキ。
さっきステージに出るときに外してしまったそれを指さして、
「やって」と首をコテンとして言ってくる。
「…しゃがんでください」
完璧な彼がこうやって無防備に頭を預けてくれるのが、
どれだけ嬉しいことか気づいているのかな。
「最後の種目楽しみだね~」
「弓弦、歓声搔っ攫う気じゃん」
両サイドに立ってくれている二人と一緒に、彼の出場する最後の種目を待つ。
『体育祭最後の競技は、選抜選手による「組対抗リレー」です!』
アナウンスと共にグラウンドには
それぞれのハチマキをつけた人たちが整列する。
弓弦君を探すと彼は列の一番後ろに並んでいた。
他の人はかけていないものを、
彼とその隣の人だけが肩から斜めにかけているのに気が付く。
「…白の襷」
私がそう呟くのと同時に、アナウンスが続く。
『団のアンカーはそれぞれの主将が務めます!』