Filigran.


そんなことを何度も考えて気がおかしくなりそうだった。






そんなとき、アイドルのとき撮影の合間に偶然入った洋食屋で、


雪乃がアルバイトをしているタイミングに鉢合わせたことを思い出した。




この世界に生きる雪乃はこうやって働いているんだ。


俺の知らない人たちと知らない仕事をしている。


撮影の時間もあるし、バレてはいけないから長居できなかったけれど、


それでも俺の心には鮮烈に残っていた。





ライブ会場近くの洋食屋、月曜の夜だった。


俺は卒業ライブの打ち上げをする料理屋を自分で決めたいと言い出して、


自ら連絡してそこに決めた。






だけどやっぱり雪乃はいない。






それでも諦めきれなかった。


騒ぎになってしまうかもしれない、それでも会いたい。







俺はあるとき調べた彼女の学校まで赴いて、



そうしてようやく雪乃を目の前にした。





この世界に来て良かったと心の底から感じた。
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