Filigran.


だからお互いの秘密を共有してる似た者同士な分、


俺たちは兄妹とか家族みたいな、そんな信頼関係になった。


…だから千夜が不安に思うような関係になることは、今後一生無いって誓える。




だけどゆきは恋愛に臆病になってしまって、


絶対に手の届かない人に疑似的な恋をするようになった。





その相手が『GlassCraft』の千夜弓弦。





想いが返ってこない相手なら、思う存分好きでいられる。


自分の『好き』が消えても相手を傷つけない。



ゆきの繊細さと優しさが相まって、その”恋”にのめりこむようになっていった。



だけどあの握手会のときに俺を睨む千夜を見て、


ゆきはアイドルから『想いが返ってこない』と思ってるけど、


実際はそうでもないかもなって気が付いた。





そのあと千夜弓弦の卒業と芸能界引退が発表されて、


それが近づいてきてることに気が付いた。




案の定、『乙木雪乃に超イケメンの彼氏』って噂が出たとき、


千夜弓弦はもう動いたのかってちょっとびっくりした。



流石にまだ付き合っては無かったけど、


それでもゆきが幸せになれる道なら応援したいって思った。


実際に最初は幸せそうだったから。



…だけど6月のある日を境に、全然笑わなくなった。



『何』があったかは分からないけど、


『誰』と何かがあったことはすぐに分かった。




「そうだろ、千夜。」



そういって俺を見つめる高藤は、大切な友人を守りに来た瞳をしている。


悔しいくらいに高藤は雪乃の騎士だった。


< 79 / 92 >

この作品をシェア

pagetop