Filigran.
「だから『私なんか』って言う雪乃を、とんでもないくらい愛してやってよ」
そういってニッコリ笑う高藤を見て、
「…やっぱり俺の好きな人は友人を見る目も良いね」
とあくまで雪乃を褒めるスタンスで言ったのに、
「うわ、千夜ってツンデレなのか!知らんかった」と高藤が騒ぐから、
うーん、なんかうるさいしやっぱり嫌いかもしれないな。
「高藤」
食事を終えて俺が話しかけると、「なに」と彼はさっぱりとした口調で聞いてくる。
「…ありがとう、雪乃のこと教えてくれて」
と正直にその感謝を伝えると、大きく頷いて「当たり前のことしただけだよ」と笑う。
俺は机の上に置かれた伝票をひったくる様に手に取ると、
「…俺が払う。だって俺の方がお前よりずっと金持ってるし」と言いながら席を立つ。
そんな俺の行動を見て、
高藤は可笑しそうに「そりゃアイドルやってたやつには敵わないよ」とケタケタ笑う。
それから、彼は優しい、けれどどこか含みの感じられる声色で言った。
「ご馳走様」
「今日は家でゆっくり休んどけよ、ゆっくりな」