Filigran.


「やっと雪乃のこと招待できた!いつでも来ていいからね」


と美花はニコニコご満悦そうだ。



「嬉しいけど、美花もお手伝いの方も準備が大変でしょ?」


とその苦労を無下にしたくないと思って言うと、


「ううん、美花は楽しいし鈴木さんも喜んでくれる」


「…不思議だね、これまでの”友達”は広いお家に遊びに来たいばっかりだったのに、


雪乃は美花自身のことばっかり心配してくる」


そういって美花が首を傾げるから、


「当たり前でしょ。こうやって用意して招待してくれるのはすっごく嬉しいよ。


だけど美花といられるならどこでも楽しいし、幸せなんだよ」




あなたのその素直さも大らかな優しさも、ここでだって培われたことは分かってる。


だけど、あなたにこの場所がなくても絶対に親友になってた。




私がどうにか伝われと思ってそう言えば、


美花は嬉しそうに、満開の桜みたいにニコーっと笑って




「美花ね、その言葉まるごと雪乃にもあげるよ」


「雪乃は頼りになる。でも頼りにならない雪乃になっても好き、大好き」


「たまにね、雪乃は美花だけじゃなくて、ちゃんと自分のことも好き?って不安になる」




その言葉には思い当たる節がありすぎて内心すごくドキドキする。




「美花は雪乃がもうベンキョ教えるの嫌!って言いだしても、もちろん親友」



「授業中寝ちゃった美花の分のノート見せてくれなくても、ずっと親友」



「何にもくれなくても、ただいつも通り微笑んで『美花』って呼んでくれたら、


頼りにならない美花だけどすぐに助けに行くよ。」




美花はいつも無邪気だけど、こうやって大切なことを言うときは


とんでもなく大人な表情をする。


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