Filigran.
「だから、美花は今こうして助けようとしてる。雪乃を」
その言葉にハッと心が大きく動揺する。
紅茶の水面に映る私の表情は、ゆらゆら切なそうだった。
「雪乃のつらさを聞いて考えて、正解を出してあげることは美花にはできない」
「だって雪乃の方がかしこいから、そんな答えなら出せちゃうもん」
美花は見惚れるような所作で一口紅茶を飲むと、
ご令嬢、と形容できるゆったりとした微笑みで言った。
「だから正解なんて探さないでうだうだ話そ?」
「雪乃の中にある、しんどいことぜんぶ」
そんな優しいことを言われてしまったら、
もう、涙も言葉も止まらなかった。
「…私は、好きな人の『好き』を受け入れてあげられないの」
ぼろぼろと零れるのは、私のいちばんのコンプレックス。
「そうなんだ」
美花は相槌を打って、とりとめのない話も受け入れてくれる。
「全部、自分が悪いって分かってるのに…」
そう言ったとき、美花から鋭い言葉が飛んできた。
「ちがうよ。訂正して、雪乃は悪くない」
あぁ、こうやって言ってくれる美花の優しさが、強さが大好きだ。
「…ありがとう」