Filigran.
はじめて世界が重なった日


綺麗な照明に彩られたエントランスに入ると、


コンシェルジュの方がいたり、ロビーラウンジがあったりと素敵な設備が整っているみたいだ。


防犯カメラもたくさん作動していて、


心臓が出てきそうなほどドキドキしながらオートロックシステムに『1201』と打つ。




さっきとは違ってちゃんと話すのは1カ月ぶりだ。


『…はい…え、ちょ、雪乃⁉なんで』



無機質な声での応答から、


私であると気が付いて焦る声が愛おしいなと思う。


「…会いに来たから、開けてください」



私は”素直に”そう言うと、



彼はしばしの沈黙のあと『あいつ騙しやがって』と何だか不穏なことを言ってから、



『…入っていいよ。気を付けてあがってきて』と優しい声色でロックを外してくれた。




2機あるエレベーターはどちらを選べば良いのでしょうか…?




そんなことを思っていたら1機やってきたので乗り込んで、『12』のボタンを押した。



すぐに辿り着いた最上階の角の部屋。


『1201』の表札を見て、息をのむ。


震える手で、真っすぐチャイムを押した。



すぐに開いたドアの先には、


「…ごめん、さっきまで風呂入ってたから」



濡れた髪を下してシルクのサテンパジャマを着こなす、


私の大好きな人が立っていた。



しかもトップスは暑いのか大きく胸元を開けていて、


…その、ファンとしては大変良くない絵面といいますか…。


< 88 / 92 >

この作品をシェア

pagetop