Filigran.
はじめて世界が重なった日
綺麗な照明に彩られたエントランスに入ると、
コンシェルジュの方がいたり、ロビーラウンジがあったりと素敵な設備が整っているみたいだ。
防犯カメラもたくさん作動していて、
心臓が出てきそうなほどドキドキしながらオートロックシステムに『1201』と打つ。
さっきとは違ってちゃんと話すのは1カ月ぶりだ。
『…はい…え、ちょ、雪乃⁉なんで』
無機質な声での応答から、
私であると気が付いて焦る声が愛おしいなと思う。
「…会いに来たから、開けてください」
私は”素直に”そう言うと、
彼はしばしの沈黙のあと『あいつ騙しやがって』と何だか不穏なことを言ってから、
『…入っていいよ。気を付けてあがってきて』と優しい声色でロックを外してくれた。
2機あるエレベーターはどちらを選べば良いのでしょうか…?
そんなことを思っていたら1機やってきたので乗り込んで、『12』のボタンを押した。
すぐに辿り着いた最上階の角の部屋。
『1201』の表札を見て、息をのむ。
震える手で、真っすぐチャイムを押した。
すぐに開いたドアの先には、
「…ごめん、さっきまで風呂入ってたから」
濡れた髪を下してシルクのサテンパジャマを着こなす、
私の大好きな人が立っていた。
しかもトップスは暑いのか大きく胸元を開けていて、
…その、ファンとしては大変良くない絵面といいますか…。