大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 ナイフを捨て両手をあげて降参した。
「冗談だって。ただ、そろそろ交代してもらおうかって思っただけだよ」
 冷や汗をかきながら愛想笑いを浮かべて苦しい言い訳を試みる。

 コハクはこちらをじっと睨み続けている。ここで目をそらせば命はないだろう。
 リリアナを殺して口封じしようなどと考えたことを心底後悔した。
 どうかしていた。魔がさしたというやつだろうか。この子は雪崩に巻き込んだことをたいして怒りもせず、自分を信頼して美味しいガーデン料理を振る舞ってくれたというのに。
 命が繋がれば潔くペナルティを受け、冒険者からも足を洗ってまっとうに生きていこう。
 
 その反省の念がコハクにも伝わったのだろうか、一度瞬きした琥珀色の目から殺気が消えた。
 そしてコハクはフンッと鼻を鳴らすと、再び目をつむりリリアナに寄り添う。
 まるで『妙なことを考えた罰として、夜明けまでおまえがランタンの当番を続けろ』とでも言いたげな様子に苦笑した。

 見逃してくれたらしい。
 こわばっていた全身の力を抜いてシュラフに足を突っ込み、その罰を甘んじて受け入れたのだった。
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