大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 みんなで拠点へ戻る道中、リリアナは昨日の圧力鍋について語りはじめた。
「鍋がガタガタ揺れてね、アルノーがヒイヒイ言いながら蓋を押さえてくれたのよ!」
 話を聞くハリスとテオの顔はどことなく引きつっている。
 アルノーは苦笑しながら人差し指で頬をかく。
「あれはヤバかったなー」

 ここでふとリリアナが大事なことを思い出した。
「そういえば、昨日のオウルベアの肉はどうしたの? もう食べちゃった?」
「ああ、あれならリリアナが無事に帰ってきたらみんなで食べようと思って、リストランテ・ガーデンで保管してもらっている」
 さすがはハリスだ。なんて気が利くんだろうか!
 
「じゃあ、オウルベア鍋も圧力かけて作ってみましょうよ!」
 その提案に首を縦に振る者はひとりもいない。
 リリアナがハリスとテオを交互に見たが、目をそらされてしまった。
「アルノーは経験者だもの。もう一度手伝ってくれるわよね?」
 リリアナがにっこり笑って言うと、アルノーは勘弁してくれと言わんばかりの渋い表情になる。
「俺は……ほら、あれだ。拠点に戻ったら真っすぐ自首するから、手伝うのは無理だ。残念だなあ」
 最後の「残念だなあ」が棒読みだ。

「もっと頑丈な鍋を用意した方がいいから、とりあえずまた今度だな」
 ハリスの提案にテオが首を激しく縦に振る。
「そうだ、それがいい。そん時は俺が手伝ってやるからまかしとけ」
「ガウッ!」
 普段テオと仲の悪いコハクが意気投合して頷きあっている様子が妙におもしろくないリリアナだ。

「もうっ! オウルベアの肉はぜーんぶ、わたしがひとりでいただくわっ!!」
 晴天の雪山に、リリアナの不満げな声と皆の笑い声が響いた。

(8皿目・完食)
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