大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 ******

「いいか、霧の中で迷子になって自分がどこにいるかわからなくなったら、むやみに移動しないことだ。常に声をかけあうことも大事だ」
 湿地帯エリア初体験のリリアナとテオの顔を交互に見ながらハリスが心得を語って聞かせる。
 昨夜からこれで何度目だろうか。
 テオはいい加減うんざりといった顔をしているが、それだけ危険なのだろうとリリアナは気を引き締める。
 
 チャーリーのパーティーと合流して一緒に湿地帯エリアまで移動し、拠点から先はそれぞれ分かれて捜索することになった。
 ジョセフがはぐれたのは拠点からそう遠くない位置だったようだ。
 濃い霧に包まれたと思ったらすぐ近くにいるはずのジョセフの気配が消え、名前を呼んでも返事がなかったという。

 ハリスとコハクを先頭に、そのすぐ後ろをリリアナとテオが並んで歩く。いまのところ霧はほとんどかかっておらず、捜索活動に適した状況だ。
 湿度が高く、蒸し暑い湿気がまとわりついてくるような不快感がある。
 地面は踏みしめると水分のにじむ緑色の苔に一面覆われている。リリアナはその足元に視線を落とし、なにか手掛かりはないかと探しながら歩いた。
 テオが無言のままリリアナの手を握ってきた。
 驚いて顔を上げるリリアナとは目を合わさないまま、テオがフイッと横を向く。
「下ばっかり見てたら迷子になるだろ」
「ありがと」
 リリアナは一瞬微笑んで、テオにだけ聞こえるようにそう言った。

 
< 117 / 145 >

この作品をシェア

pagetop