大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 リリアナたちが目指すのは、拠点からまっすぐ北にある沼だ。
 ジョセフが行方不明になった時もその沼を目指している途中だったという。濃霧ではぐれ、方向感覚も失って拠点とは反対の沼に向かったのかもしれない。

 ハリスによれば、このエリアはずっと霧が濃いわけではなく、薄くなったり濃くなったりを繰り返しているらしい。厄介なのは、一瞬にして霧が立ち込めて突然視界が真っ白になることなんだとか。
 大きくて武骨な手がしっかりと自分の手を握ってくれている安心感に包まれながら、リリアナは視線をあちこち移動させながら手がかりを探し続ける。

 遠くで怒号がうっすら聞こえるのはチャーリーたちが魔物と戦闘している声だろうか。
 手がかりを見つけるか応援が必要になった時は救援信号を上げると申し合わせているが、まだそれがないということは大丈夫なのだろう。

 前方に低木が繁っているのが見えてきた。
 沼地に生息する特有の木で、むき出しになったタコの足のような根っこが放射状に広がって水に浸かり、幹を支えている。
 この木が取り囲んでいる場所がオオナマズの生息する沼だ。

「ナマズは沼から出てこないが、毒ガエルと泥マンドラゴラは飛び出してくるから注意してくれ」
 ハリスが静かに告げる。
 ここからは魔物との戦闘になる恐れがあるため、もう手を繋いではいられない。

 オオナマズに毒ガエル、泥マンドラゴラって美味しいんだろうか……ついつい意識が食い気に支配されそうになるリリアナだ。
 ジョセフの冒険者カードをはじめとする手がかりの捜索が一番の目的であることは承知している。その上で、リリアナにとっては初めて足を踏み入れたこのエリアの魔物を倒し、ガーデン料理をいただくのもまた大きな目的のひとつだ。
< 118 / 145 >

この作品をシェア

pagetop