大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 ひとまずホッとしたリリアナにエミリーがそっと耳打ちする。
「ありがとう。みなさんのことよろしくお願いしますね」

 エミリーがスカートの裾を持ち上げて、太腿に忍ばせていたムチを手に取った。
 ピシィ!と地面に打ち付けてそれを伸ばすと、柔らかい表情を消し去ったエミリーが不敵な笑みを浮かべながら軽い足取りでマンドラゴラの群れへと向かっていく。
 後ろからテオの首に巻きつこうとしていたマンドラゴラは、逆にムチ絡めとられて振り回され地面に叩きつけられた。
「すっげー!」
「かっこいい!」
 結界の中で観戦している初心者たちから歓声と拍手があがる。
 
 油断するとすぐに背後をとられ足や首に巻きつかれて苦戦していたテオとハリスだが、エミリーが加わったことで形勢が逆転した。
 さらにそこへ、畑の向こう側で実演調理に使用する野菜の下ごしらえをしていたリストランテ・ガーデンの調理士たちも騒ぎに気づいて駆けつけてきた。
「ハリス先生! 楽しそうっスね!」
「俺たちも仲間に入れてください」

 ペティナイフを投げたり木製の麺棒を両手に持って振り回したりと、調理士たちの武器と戦い方は多彩で華麗だ。その様子に初心者たちの目が釘付けになる。
「あの人たち、ただのコックじゃなかったんだ」
 そんな呟きも聞こえて、リリアナはうふふっと笑ったのだった。

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