大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「なあんだ、やっぱり弱っちいお坊ちゃまだな。試練の塔を突破することもできなかったのかよ」
 ニヤニヤ笑うテオにネリスがさらに気色ばむ。
「そういうおまえは塔に挑戦したことがあるのか?」
「いや、ないけど」
「フンッ、挑戦したこともないヤツがなにを偉そうに」
「なんだと、コラァ!」

 再び一触即発で睨み合っているふたりの間にリリアナがずいっと割り込んだ。
「待って! 試練の塔ってなに? レオナルドの招待状を手に入れたらすぐにレオナルド・ジュリアーニに会えるわけじゃないってこと?」

 ネリスはそんなリリアナの手をガシっと握る。
「そうだ、知らなかっただろう? 招待状なのだからそのまま会えると思うのが普通じゃないか。それがまさか、制限時間内に塔の最上階まで辿り着けなければ会えないとか、ひとりで挑戦しないといけないとか、レオナルドとかいう魔法使いは随分と性格の悪い男のようだな」
「わかる! わたしもレオナルドに会ったら一発殴ってやらないと気が済まないわっ!」
 大きく頷くリリアナに、ネリスは表情を緩める。
「さすが私の知り合いなだけはあるな。話が合う」
 
 するとテオが、おもしろくなさそうに大声をあげた。
「仲良くしてんじゃねえ!」
 シュパッと手刀を振り下ろされ、ネリスとリリアナの手が離れた。

 そこへ、細目の男が持ったままだった黒龍の兜を差し出した。
「じゃあ、あとはよろしく! 俺たちはここまでなんで、お疲れ様!」
 細目の男は相変わらずの軽い口調で兜をネリスに手渡すと、仲間の元へと小走りで戻っていく。
「またご贔屓に!」
「お疲れさん!」
 そう言ってキャリーパーティーのメンバーたちは背中を向けてぞろぞろ歩き出した。

「待てい! こんなヤツ、よろしくされても迷惑だっ!」
 テオが叫ぶが、彼らは振り返ることなく行ってしまった。
「お金で雇われているだけのドライな関係なんだから仕方ないわよ」
 リリアナはあっけらかんと言ってハリスを振り返った。
「ねえ、先生。ネリスも一緒にご飯食べてもいいわよね?」

「そうだな……」
 コハクを抱くハリスは苦笑しながら頷いた。
 そんなハリスをいたわるようにコハクが彼の手に頬ずりしたのだった。
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