大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「悪かった。まさかレオナルドに会えないと思っていなかったものだから、話が違うだろうと思わず癇癪を起して兜を投げてしまったんだ。当たったのがリリアナでなくてよかった」
 にっこり笑うネリスの隣で、リリアナはうんうんと適当な相槌を打ちながらテーブルに並んだ料理を食べ続けている。

「待て待て。当たったのが俺でよかったって意味か? まず俺に謝れ」
 ネリスの正面に座るテオは不服そうに唇を尖らせる。
 おまけにコハクがネリスの膝の上で甘えながら、ちゃっかりハムを食べさせてもらっているあざとさも気に入らないようで、コハクのことも睨みつけている。
 話題を逸らすのがうまいのは王族だからか、それともマイペースなだけなのか、ネリスはテオの怒りをするりとかわした。
「それはそうと、テオは見かけによらず小食なんだな。揚げイモをチビチビかじるだけとは、なかなか可愛いじゃないか。遠慮はいらないぞ」
 テオの顔が赤くなる。
「キノコ鍋を食いすぎて腹減ってないんだっつってんだろうが!」
「そうか、それは残念だったな」
 快活に笑うネリスとむくれているテオに苦笑しながら、ハリスはエールのグラスを傾けている。

 ネリスは、迷惑をかけたお詫びに街で一番の高級料理店でご馳走すると提案した。
 その高級店を断り、この大衆食堂に変更したのはリリアナだ。
「質より量よっ!」
 宣言通り、遠慮のなさすぎる食べっぷりだ。

「うずらのグリル、5人前おかわりっ!」
 威勢よく注文するリリアナに優雅な笑顔を向けるネリスは、財布を気にする素振りを全く見せない。
「どんだけ金持ちなんだよ」
 ボソっと独りごちるテオが、最悪の第一印象だったネリスの奢りにのこのこついてきたのには訳がある。
 試練の塔のことを聞きたかったのだ。
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