大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「そんなに勝負したいなら釣り対決なんてどう? いま、ワカヤシ釣りシーズンじゃなかったかしら」
「ああ、いいね」
 リリアナの提案にハリスも頷いた。
「やってやろうじゃねーか。言っとくけど俺、釣りは得意だぜ?」
 テオは勝ったも同然とでも言いたげなドヤ顔をする。
 
 モダヤシという名前の魔魚がいる。
 食欲旺盛・繁殖力も旺盛で湖の藻を全て食べ尽くししまうことから「モダヤシ」と名付けられ、その稚魚は「若いモダヤシ」が省略されて「ワカヤシ」と呼ばれている。
 秋に産卵し、孵化した稚魚たちは冬の間、表面が氷に覆われた湖底でプランクトンや微生物を食べて過ごす。そして気温の上がる春・夏でどんどん大きくなるという生態だ。
 成長に気温差が不可欠のため、モダヤシの生息エリアには四季がある。
 街でワカヤシ釣り用の釣り竿や氷に穴を開けるためのアイスドリルが店頭に並び始めると、冒険者たちはワカヤシ釣りシーズンが来たことを知る。
 釣り上げたワカヤシをその場で揚げて食べるのが、たまらなく美味しい。

「マリールさんも誘って一緒に釣りしましょ。レオナルドのサインよりもうんと楽しくて喜んでくれると思うわ」
「そうか、じゃあ誘ってみるとしよう」
 頬をわずかに紅潮させてネリスが頷いた。

 こうしてワカヤシの釣り対決が決定したのだった。
 
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