大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 リリアナは、スライムだんごを細長く練ってイモムシに見立てた。それを五連の釣り針に付け、氷の穴に垂らす。
 あとはワカヤシを誘う感じでたまに竿を揺らせばいい。
「慌てない、慌てない」
 こういうのは、のんびり構えないと……そう自分に言い聞かせながら折り畳みチェアに腰かけようとした時、興奮した甲高い声が聞こえた。

「ネリス様! これもしかして!」
 マリールの竿がしなってプルプル小刻みに震えている。
 早速ワカヤシがヒットしたらしい。
 竿を持つマリールの手にネリスも手を重ねて一緒に引き上げると、五連針の四か所にワカヤシが食いついていた。
 嬉しそうにそれを見せるマリールにリリアナも拍手を送った。
 活きのいいワカヤシにおっかなびっくりのマリールの代わって、ネリスが針から外してバケツに入れている。その様子を見たリリアナは、ますます口元を緩ませた。
 
 マリールは釣りは初めてだと言っていたが、ビギナーズラックなのかそれとも才能があるのか、彼女はその後も大当たりを連発した。
 ネリスは自分の釣りそっちのけで、甲斐甲斐しくマリールの手伝いをしている。

 離れた場所にいるテオを見やると、ちょうどワカヤシを釣り上げているところだった。それなりの釣果をあげているようだ。
 よかった、釣りが得意って言ってたのは本当だったのね。
 もしもテオがボウズだったらイライラして氷を叩き割るかもしれないと危惧していたリリアナは、ホッと胸をなでおろす。
 振り返ると、ハリスが指でオッケーサインを出した。
 油の温度が適温になったようだ。

 リリアナは立ち上がってネリスたちに近寄った。
「一旦、調理してもらうわね」
 バケツを見ると、ざっと数えただけでもすでに20尾ほどのワカヤシが入っている。
「マリール、あなたすごいわね! 筋がいいわ!」
 まだ1尾も釣れていないくせに何目線だと思われそうなことをリリアナが言っても、マリールはまったく気にせず可愛らしくはにかんでいる。
「ありがとうございます。とっても楽しいです」
 そんな彼女を、ネリスが眩しそうに目を細めて見ている様子が微笑ましい。
 最初のギクシャクした雰囲気はどこへやら、ワカヤシ釣りで親密度アップ作戦がうまくいっていることに満足して、リリアナはハリスの元へバケツを運んだ。
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