大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「なんだよこの包丁、ちっとも切れねーな!」
 ベーコンを焼いてバケットに挟んで食べるつもりだった。
 塊のベーコンを食べる分だけ薄切りにしてフライパンで焦げ目がつく程度に焼き、斜めにスライスしたバケットで挟む、それだけだ。いつもハリスやリリアナがやっている行程を見ているから作り方は知っている。
 だから簡単にできると思っていたテオだったが、いざやってみるとなにもかもうまくいかない。

 まずベーコンがうまく切れなかった。
 ハリスはいつも、いとも簡単にスッと薄切りにしているはずなのに。
「まあ味は変わらねえだろ」
 言い訳じみたことを呟きながら、分厚くなったり途中でちぎれたりしたベーコンをフライパンに並べて火にかける。

 次にバケットをスライスしようとしたら、こっちはもっと厄介だった。外側は硬くて中が柔らかいバケットを、切るというよりは潰してちぎることしかできず、ボロボロの欠片を量産している。
 おかしい。リリアナはいつもどうやってあんなにきれいに切っているんだろうか。
「まさか魔法か!?」
 そう言った拍子に手元が狂い、バケットを押さえていた左手の人差し指を包丁で少々切ってしまった。
 
 傷口を舐めているとなんだか焦げ臭い匂いがして、ベーコンを火にかけたまま忘れていたことに気付く。
 ハッと振り返った時にはすでにベーコンは真っ黒に焦げ、フライパンから煙がモクモク立ち上っていた。
 この日のテオの昼食は、ボロボロにちぎれたバケットと黒焦げベーコンというひどいもので、ちっとも美味しくない。
 おまけに皿を洗おうとして割り、破片を片付けようとしてまた指を切ったテオは、途方に暮れたのだった。

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