大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 隣にある安全地帯の観光客用ビーチでバーベキューセットを借りた。
 ハリスとリリアナは、これまでにも何度か海エリアに来たことがあるため自前の水着を持っている。ここへ来るのは初めてだというテオは水着とビーチサンダルを購入した。
 
 まずはバーベキュー用の食材探しだ。
 軽く手足のストレッチをしたリリアナは、テオの腕を引っ張った。
「ほら、テオも行くわよ」
 しかしどういうわけか、テオにいつもの元気がない。
 しかも波が足にかかると、わずかに後ずさりしているではないか。コハクと同じ反応だ。

「ねえ、もしかしてテオって、泳げないの?」
「うるせー! 海が初めてなだけだ!」
 テオが悔しそうに言い返す。
 リリアナは裕福な商家の生まれでよく家族旅行もしていたため、海水浴の経験がある。冒険者になる前にガーデン内の観光客用ビーチにも遊びに来たこともあるため、水に抵抗感はないし泳ぎも得意だ。
 テオが育ったウォーリアの里がどこにあるのかリリアナは知らない。おそらく海や湖や川といった泳ぎをマスターできる環境ではない場所にあるのだろう。

「教えてあげようか?」
「教わらなくても、すぐに泳げるようになる!」
 ムキになったテオがザブザブ水しぶきをあげながら海に入っていく。
 しかしすぐに波に足をすくわれて派手に転んだ。
 
 どうにか立ち上がったテオが咳き込んでいる。
「ゲホッ! なんだよこれ、しょっぱっ! ゲホ、ゲホッ!」
 海水を飲んでしまったのだろう。
 そんなテオを見て、リリアナは思わず声を立てて笑う。
 
「子供用の浮き輪を借りてくるか?」
 ハリスの提案は、からかったわけではなく大真面目なものだったが、これがとどめとなりテオは完全に拗ねてしまった。
「見てろよ~! 自力ですぐに泳げるようになってみせるからな!」
 テオはめげずにまた海に潜った。

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