大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
(テオ視点)

 テオの故郷の里は山間にあり、近くの沢は泳げるような深さではなかったため、これまで本格的に泳いだ経験がなかった。
 それをリリアナとコハクがからかってくるのが悔しくて、懸命にもがいているうちにどうやらコツを掴んだらしい。特にクラーケンを食べてからはバフのおかげかスイスイ泳げるようになった。
 しかし海底まで潜って貝を拾うのはまた勝手が違って苦戦していると、リリアナが網いっぱいに貝を詰め込んで泳いでいるのが見えた。

 あっちには宝石貝がそんなにたくさんいるのかと思って、先程までリリアナがいた方向へ泳いでいく。
 その付近の海底には不自然なほど大量の宝石貝がいた。
 妙な違和感を感じるのはなぜだろう。
 よく確かめるために一旦海面に出て大きく息を吸い、潜って近づいていく途中で背筋がゾクリとしてテオは動きを止めた。
 なにかいる。宝石貝ではなく別の、もっと大きな魔物だ。
 しかしよく見渡せる海の中は平穏そのものだ。

 嫌な予感の正体を探ろうとしていると、テオの視界の端にリリアナが泳いでくるのが見えた。
 ダメだ。来ちゃいけない!
 声が出せないから手を振って止めようとしたが、伝わらなかったらしい。
 次の瞬間、海底から盛り上がるように動き始めたそれはリリアナに襲いかかり、大きな口を開けてリリアナを飲み込んでしまった。

 嘘だろ。海底の風景に擬態していたのか!?
 それは平べったい大きな魚だった。
 おびき寄せるためのエサになりそうなものをそばに置き、擬態して獲物をじっと待つ大きな魔魚がいると聞いたことがある。
 
「先生! リリアナが魚に飲みこまれた!」
 海面に浮上して叫んだテオは再び潜る。
 魚のヒレを掴もうとするもヌルヌルしていてうまく掴めない。急いで頭の方へ泳ぎ、今度はエラをがっちり掴んだ。
 もう片方の手で魚を殴ったものの、水の抵抗と海中で踏ん張りがきかないためうまく力が出ない。エラを掴まれても構うことなく海底を這うように沖へ逃げようとする魚に引き摺られる。
 このままではどうしようもないと思った時、テオの足に岩が当たった。

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