大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 きっとこれが唯一のチャンスだ。
 テオは瞬時に、この岩に足をかけて踏ん張り魚をぶん投げるイメージを膨らませて手足にありったけの闘気を込める。
 そして、利き腕が壊れたって構うものかとさらに気合を入れて歯を食いしばり、魚を持ち上げて海面に向かって投げ飛ばした。
 大きな魚が飛んでいくのを見届けたところで息が続かなくなり、慌てて海面に顔を出す。
 水の抵抗に逆らいながら渾身の力を込めて魚を投げた右肩が悲鳴をあげている。
 
 砂浜に横たわる魚の目にハリスの出刃包丁が刺さっているのが見えた。
 そうだ、リリアナがまだアイツの中に……。
「肩いてえとか言ってる場合かっ!」
 テオは懸命に泳ぎ、砂浜に戻った。

 魚はすでに息絶えているようだった。
 コハクが心配そうに魚の周りを行ったり来たりウロウロしている。
「海王魚だ。浅瀬にはあまりいない魔物だが、さっきのクラーケンを追ってきたのかもしれない」
 ハリスはテオに説明しながら包丁で手早く海王魚の腹を割き、内臓を取り出した。
 でろんと飛び出した胃と思われる大きな袋状のものが暴れるように激しく動いている。
 
「リリアナ、助けてやるから動くな」
 ハリスが声をかけると、ぴたりと動かなくなった。
 中にいるリリアナを傷つけないようハリスが丁寧に切り開くと、粘液やほかの魚とともにリリアナが出てきた。

 ハリスが水魔法でリリアナにまとわりついている粘液をきれいに洗い流す。
「死ぬかと思ったあぁぁぁっ!」
 砂浜にペタンと座って半べそをかいているが、どこもなんともないようだ。
 
 リリアナの元気な声を聞いた途端、再びテオの右肩が再び痛み出した。
「テオ、よくやった」
 ハリスに褒められたテオは、肩を押さえながらもホッとしたように笑ったのだった。

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