大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
「一旦ここで休憩だ」
 雪洞の脇の、雪が吹き溜まりになってこんもり積もっている箇所を利用することにした。リリアナとテオがかまくらを作りハリスが食事の用意をする間、コハクは周囲の警戒をする。
 セーフティカードを置けば結界が張られるため魔物に襲われる心配はないが、それよりも危険なのは雪崩だ。

 雪山エリアは常に気温が低いため、気温の上昇で雪が緩むことによる雪崩は起こらない。
 しかし魔物を狩るための魔法や罠の爆薬の加減を間違うと、その衝撃で雪崩が発生することがある。
 セーフティカードは招かざる魔物の侵入を防ぐだけで、あらゆるものから身を守ってくれるシェルターではない。雪崩に巻き込まれれば流されてしまうし、猛吹雪の寒さをしのげるわけでもない。
 そのためコハクは、視覚と聴覚を使って山頂付近からの雪崩がないか警戒してくれているというわけだ。

 リリアナは、かまくら作りの途中で雪の下からアカニンジンを発見した。
 雪の下でも育つニンジンで、これがアルミラージの餌になっている。真っ赤な色をしていて、少し辛みがあるのが特徴だ。
「ハリス先生! これも一緒に調理して」
 リリアナからアカニンジンを受け取ったハリスは、ちょうどアルミラージを捌き終えたところだった。
「いいね。一緒に煮込むか」
 
 コハク用の生肉を取り分け、残りのアルミラージの肉は細かくミンチにして香辛料とともにひと口大の団子状にまとめてある。
 ハリスは、アカニンジンを薄切りにして水を張った鍋に入れて火にかけると立ち上がった。
 テオが首を切り落とした方は囮には使えないが、ハリスが仕留めたアルミラージの皮は、腹部を開かれただけでまだきれいに姿を残している。この皮に内臓を詰め直すと、ハリスは少し離れた岩陰に置いた。

 一見すると、怪我をして動けなくなっているアルミラージのようだ。
 この見た目と血の匂いでオウルベアを誘う。オウルベアを探して歩き回るよりも、向こうから獲物がやって来るのをかまくらで食事しながら待つ方が効率がいい。

「お腹すいたー。テオ、早くかまくら完成させるわよっ!」
 呆れた顔で笑うテオをせかして、アルミラージの肉団子スープを早く食べるべく張り切るリリアナだ。
 
 
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