大食いパーティー、ガーデンにて奮闘する
 冒険者がいると悟られないようオウルベアが出てきそうな氷樹林の風下で、しかもかまくらの中で調理しているが、それでもなるべく短時間で終わらせたい。
 そのためハリスは、アカニンジンにすぐに熱が通るよう薄く切ったようだ。
「辛み成分が出すぎて、刺激が強いかもしれないな」
 
 たしかにスープだったら野菜がゴロっと入っている方が食べ応えがあるし、時間をかけてじっくり煮込んだ方が味が良くしみて美味しい。
「時間を短縮して早く火を通す方法はないのかしら。 魔法は?」
 炎系の魔法を使うという手もあるが、加減を間違うと黒焦げにしてしまいそうだ。今度、レオナルド魔道具商会で調理系の魔導書がないか探してみようと考えるリリアナに、ハリスがおもしろいことを教えてくれた。

「鍋の圧力を高めれば中が高温になって一気に加熱できるんだが……」
「じゃあ、重力魔法ね?」
 重力魔法とは対象の周囲の重力を操作する魔法で、重くすれば敵を足止めすることができ、軽くすれば高く滞空時間の長いジャンプができる。熟練した上級者になれば、空を飛ぶことも可能だ。
「ただなあ」
 鍋をかき混ぜるハリスは歯切れ悪く言う。
「昔、試した時に魔法を止めた途端に鍋の蓋が吹っ飛んで、中身も全部吹きこぼれた。その挙句ヤケドして、それ以来やってない」

 ハリス先生も、そんな大失敗することがあるのね!?
 しかし、頬についた芋のかけらを食べてみたところ、驚くほどやわらかくて味もしっかりしみていたらしい。
 リリアナがその時の惨状を想像しているうちに、料理が完成した。

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