愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
救急車で運ばれた智光さんは、傷の程度はそれほど深くなかったけれど、なぜだか目を覚まさなかった。打ち所が悪かったとしか言いようがない、などと言われても納得できるわけもなく……。

「やえちゃん、一度家に帰って休んだ方がいいわ」

ベッドの横から離れない私を、お義母さんが気遣ってくれる。

「そうだぞ。やえちゃんまで倒れたら目を覚ました智光が悲しむだろう」

会長――お義父さんも声をかけてくれる。本当は私がお二人を気遣うべきなのに、私が泣いてばかりだから見かねているのだろう。だけどどうしても涙を止めることができない。

「本当に……すみません……私のせいで……」

涙が先に込み上げてきてしまい、言葉にならない。どう考えても智光さんは私をかばってこうなってしまっている。そもそも私があの家を飛び出したからトラブルに巻き込んでしまうことになって……。

「こんなときになんだけど、お父さんが倒れた時のこと思い出すわ。あのときもやえちゃん、本当に一生懸命動いてくれて、私はとても心強かったのよ」

「おかあさん……」

お義母さんは私の手をぎゅっと握った。あたたかくて力強い。

「あのね、智光は本当にやえちゃんのことを大切に想っているの。だから何としても守りたかったと思うの」

「おかあさん……でも、私の責任なんです」

本当に、どうしたって私の家の事情だから。

「やえちゃん、それは違う。智光はあまり感情を出すのが得意じゃないんだが、やえちゃんのことだけはわしらに話した。やえちゃんを守りたいから力を貸してほしいってな。やえちゃんにとって家の事情を話されることは不本意かもしれないが、智光にとってはどうしても譲れないものだったんだろう」

「だから信じて待ってあげてね。智光が目を覚ますのを。でもやえちゃんが元気でいてくれないと、智光も悲しむわ」

お義父さんとお義母さんの言葉に小さくコクンと頷くことしかできなかった。
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