愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
私は無力だ。
智光さんは私のためにいろいろなことをしてくれたのに、私は何もできない。ただ隣にいて手を握ることくらいしかできないなんて、なんてちっぽけなのだろう。

『いざとなったら智光さんが助けてくれるんですよね』
『当然だ』

あのときの会話が悔やまれる。
こんな風に守って貰うなんて思いもよらなかった。
悔やんでも悔やみきれずに胸が苦しい。

それに、一番つらいのは智光さんのご両親だと思うのに、不甲斐ない私を励ましてくれた。その心の広さがありがたいのに、今の私にはつらすぎてどうしようもない。いっそのこと私を責め立ててほしかった。お前が悪いのだと。私のせいでこうなったのだと。

智光さんと結婚しなければこんなことにはならなかったのかな……。

ふとそう考えるけれど、答えは出ない。
私の中の浅ましい気持ちが、智光さんと離れたくないと駄々をこねている。

お義母さんとお義父さんが教えてくださった。もしかしたら私を励ますために誇張されたのかもしれないけれど……。

「……智光さん、私のこと大切に想っているって……本当ですか?」

智光さんは慈悲深いから。だから優しいんだと思っていたけれど、本当のところはどう思っているんだろうか。そういえば智光さんの気持ちを聞いたことがないような気がする。

「智光さん……目を覚ましてください」

手を握っても反応はない。寂しくて悲しくて、また涙がじわりとわいて視界がぼやけていく。

「お願い……智光さん……」

呼びかけはむなしく、夜の闇に消えていった。
散々泣いたのに、涙は枯れることを知らないようだ。
私はただ祈ることしかできなかった。
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