愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「そっか。それでも君は久賀のことを受け入れてくれたんだろ」
「受け入れるもなにも……。逆に智光さんが私を受け入れてくれたというか……」
「確かに、久賀はやえさんのこと溺愛しているよね」
「でっ、溺愛?」
驚いて声が裏返りそうになった。石井さんは何を言い出すのか、「そうなんだよ」と頷く。思わず智光さんを見るけれど、ピクリとも反応しない。
「おーい久賀ぁ、目を覚まさないとお前の溺愛っぷりをやえさんに話すぞ」
「ちょっ、えっ、どっ、どういうことですか?」
「聞きたい?」
「聞きたいです」
私は首がもげるほどに頷く。
だって、ご両親からは「智光はやえちゃんのことを大切に想っている」と言われるし、智光さんの私に対する気持ちがもしかしたら慈悲ではないのかも……なんて期待をしてしまっている自分がいるからだ。そんなわけないと思うのに、そうだったら嬉しいって心が叫ぶ。
「久賀とは小中高が一緒でさ、ずっと仲がいいんだ。今回やえさんの依頼を受けたのも、やえさんが入院した日に電話がかかってきてさ。それはもう怒り心頭で取り乱していたっけ。あんな久賀を見たのは初めてだよ」
「そんな早くから対応してくださっていたのですね……」
「久賀が、できるだけ早期に解決してほしいって。やえさんは大事な人だからって言ってね」
私は開いた口が塞がらないでいた。
その後も、石井さんは智光さんのエピソードをたくさん教えてくれた。
仕事の傍らにたくさんの書類の手続きをしてくれていたことや、私には心配かけまいとそのことを秘密で動いていたこと。
結婚したと報告したときの嬉しそうな顔は大変な見物だったということ。
揶揄ったら耳まで真っ赤にして照れていたことなど、たくさんたくさん……。
私の知らない智光さんがそこにいた。
石井さんから聞く話はどれもこれも嬉しくて、でもどうして私にはそうやって言ってくれないんだろうってちょっと悲しくて。ぽろりぽろりと涙がこぼれ落ちる。