愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
窓から差し込む日差しが眩しい。
ああ、目を開けるのが億劫だな。もう少し寝ていても問題ないだろうか。目覚ましはまだ鳴っていないし……。

すうっと眠りの淵に持って行かれそうになったとき、「智光さん」と何度も呼ぶ声が聞こえた。

本当にやえは早起きだな、まだ眠っていればいいものを。

彼女を手繰り寄せようと手を伸ばすが、逆にガシッと掴まれてしまった。

ああ、わかったわかった。今起きるから。

「……おはよう、やえ」

「……と、ともみつ……さ……」

目の前のやえは俺を覗き込みながらなぜだか泣いていて、次から次へと大粒の涙がまるで宝石のようにキラキラとこぼれ落ちる。

「どうした?」

「……よかった……よかったです……ともみつさん……わああっ」

泣いている顔が、桜の木の下で見た子どもと重なる。俺は泣きじゃくるやえの頭をそっと撫でた。手のひらに伝わる感触が生々しく心地良い。

その後いろいろな人がバタバタと入れ替わり立ち替わりやってきて処置を施されている間に、徐々に頭が鮮明になっていった。

どうやら俺は数日間意識がなかったらしい。その間やえが朝から晩までついててくれたのだとか。

連絡を受けた両親が病室にやってきて、母は俺の顔を見るなり「やえちゃんに心配かけて、このバカ息子!」と泣いた。横にいたやえもまた泣いた。

父にはこっぴどく叱られた。何でもかんでも自分で背負うなと……。横にいるやえが大きく頷く。もうそれは首がもげるほどに。
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