愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
あまりにもいろいろなことを考えてしまったからだろうか、頭がパンクしそうだ。なんだか智光さんとの間にぎこちない空気が流れている気がする。

ううん、生活自体はいつも通りだ。

「やえ、先にシャワーを浴びてきたらいい」

「ありがとうございます」

お言葉に甘えて先にシャワーを浴びる。どうにもこうにも頭がすっきりしなくて、ほてった体も冷ますためにぬるま湯を頭から被った。

智光さんも入れ替わりで入る。

私はソファに座ってぼんやりと考えていた。

智光さんは優しい。いつだって私のことを大切にしてくれる。それは智光さんが社員想いで慈悲深いからだと思っていた。でも本当は慈悲から来るものじゃなくて、私のことを好きだから?

皆はそうやって言う。だけど私は智光さんの口から聞いたことがない。だから聞いてみたい。本心が知りたい。それを聞くのは悪いこと?

だけどもし、私の考えが間違っていたら?
やっぱりこの結婚は慈悲だったとしたら?
それでもこの生活を続ける?

私は一緒にいたいって思っている。それに対して智光さんもそうしようって、答えてくれた。でもそれって、今までどおりってことだよね?

私はもっと、智光さんのこと知りたい。
だってこんなにも智光さんのことが好きなんだもの。智光さんのことを考えるだけで胸がきゅんとなって張り裂けそうなくらいに心臓がバクバクするの。

もう私たちは結婚しているけれど……でもそれってやっぱり形だけな気がしてならない。

私、智光さんと正式な夫婦になりたい――。
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