愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「……やえ」

戸惑うような声音に智光さんの不安が凝縮されているようできゅっと胸が苦しくなる。
もしかしたら智光さんはずっと悩んでいたのだろうか。

だとしたら、そんなもの全然問題ないんだってわかってもらいたい。
少なくとも私は、それを気持ち悪いだなんて微塵も思わないんだから。

すべてを払拭するように私はニコッと笑う。

「好きです、智光さん。だから、離婚するなんて言わないでください」

その胸に飛び込むようにぎゅうっとしがみついた。

智光さんが私を愛してくれているように、私だって智光さんのことを愛したい。智光さんがアザを気にしているのならば、私だけが知っていればいい。

「……いいのか?」

「いいもなにも、それが智光さんなんですから、何とも思いません。でも、私以外の前で裸にならないでくださいね。私だけが知っていたいです。私以外には触らせたくない……」

そう、誰にも触らせない。
私だけの智光さんでいてほしい。
自分がこんなにも独占欲が強いとは思わなかった。どんなことがあっても智光さんと離れたくないもの。

「やえ」

「はい」

顔を上げるとふっと影が落ちてくる。瞬きも忘れるくらいに優しいキスが唇を包んだ。
そうっと離れた智光さんの口角が緩やかに上がる。

「ありがとう。愛している」

今までのどんな優しい言葉よりもあたたかで柔らかい声音。愛されていることを実感するには十分すぎるほどの熱量。

胸がぎゅうっとなって体の奥が疼く。
どうしようもなく気持ちが昂ぶって抑えられなくなりそう。

「私も愛しています、智光さん」

心からの気持ちを伝えれば、くっと顎を掬われ再び唇が塞がれた。
甘い甘いキスは終わりを知らないかのように何度も重ねられる。

「やえ、幸せになろう」

「もう幸せでどうにかなりそうです。智光さん大好き――」

今度は優しく頬を包まれ、深く口づけられる。智光さんのすべてが欲しくて私は彼の首に手を回して引き寄せた。
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