愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
エピローグ
◇
仕事内容が庶務と営業事務の私は、他の社員さんに比べて会議が少ない。そんな私に久々に会議招集がかかった。
ノート片手に会議室へ入れば、そこには私の所属するソリューショングループの面々が勢揃いしていた。長机の両側に椅子があり、八名座れる。
「やえちゃんはそっちね」
「あ、はい」
指定された席は長机の短い部分、そう、いわゆるお誕生日席。なぜ? と思いつつもモニタがよく見える位置なので大人しく座る。
「では第一回、やえちゃんのウェディングミーティングを開催します!」
敦子さんが高らかに宣言し、拍手が沸き起こる。
ん? ちょっと待って。
今、「やえちゃんのウェディングミーティング」って聞こえたような……。
慌てて敦子さんを見れば目が合い、こちらに向かってぐっと親指を突き立てる。
いやいや、そうじゃなくて……。
「ちょっと待ってください。話が見えません」
質問すれば全員の目がこちらを向いた。
え、なになに、ちょっと、怖いんですけど……。
「あのね、やえちゃん。あなた結婚式してないでしょう。私たちはやえちゃんの結婚パーティーをしたいと思っているの」
「ええっ?」
「だってねぇ、やえちゃんの花嫁姿、見たいわよねぇ?」
「見たーい!」
「こら、安川、田辺! あんたたち調子に乗るとセクハラになるから黙ってなさい!」
敦子さんにぴしゃりと咎められて安川さんと田辺さんは口を慎む。
「えっと、でも別に私は結婚式なんてなくてもよくて。その、皆さんのお気持ちだけで十分というか……」
「やえちゃんが十分でも、私たちがよくないのよ。社長が入院して大変だったでしょう。快気祝いもかねて、二人のお祝いをさせてほしいのよ。それに、娘の花嫁姿“お母さん”はすっごく楽しみにしてたんだから」
茶目っ気たっぷりにウインクする敦子さんに胸がじーんと熱くなる。
「いいんですか?」
「いいに決まってるでしょう?」
結婚式のことなんて頭になかった。智光さんとの結婚は成り行きだったし、その後はちゃんとした夫婦になりたいとばかり思っていたから。
それに、たとえ結婚式をしても、私にはお金もないし呼ぶ人もいない。それなのにこんなあたたかい提案をしてもらえるだなんて。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「じゃあさっそくだけど、和装か洋装、どっちにする?」
「えっ? えっ?」
ずらりと並べられたパンフレット。
結婚パーティーといいながら、結構本格的なプランが書かれていて私はたじろぐ。
その後、仕事そっちのけでどの会場にするか、日程など、あたかも会議をしているかの如くきっちりとスケジュールが決められ、議事録まで作成された。
しかも最終的にはその議事録が社長の智光さんへメールで報告されたのだった。
仕事内容が庶務と営業事務の私は、他の社員さんに比べて会議が少ない。そんな私に久々に会議招集がかかった。
ノート片手に会議室へ入れば、そこには私の所属するソリューショングループの面々が勢揃いしていた。長机の両側に椅子があり、八名座れる。
「やえちゃんはそっちね」
「あ、はい」
指定された席は長机の短い部分、そう、いわゆるお誕生日席。なぜ? と思いつつもモニタがよく見える位置なので大人しく座る。
「では第一回、やえちゃんのウェディングミーティングを開催します!」
敦子さんが高らかに宣言し、拍手が沸き起こる。
ん? ちょっと待って。
今、「やえちゃんのウェディングミーティング」って聞こえたような……。
慌てて敦子さんを見れば目が合い、こちらに向かってぐっと親指を突き立てる。
いやいや、そうじゃなくて……。
「ちょっと待ってください。話が見えません」
質問すれば全員の目がこちらを向いた。
え、なになに、ちょっと、怖いんですけど……。
「あのね、やえちゃん。あなた結婚式してないでしょう。私たちはやえちゃんの結婚パーティーをしたいと思っているの」
「ええっ?」
「だってねぇ、やえちゃんの花嫁姿、見たいわよねぇ?」
「見たーい!」
「こら、安川、田辺! あんたたち調子に乗るとセクハラになるから黙ってなさい!」
敦子さんにぴしゃりと咎められて安川さんと田辺さんは口を慎む。
「えっと、でも別に私は結婚式なんてなくてもよくて。その、皆さんのお気持ちだけで十分というか……」
「やえちゃんが十分でも、私たちがよくないのよ。社長が入院して大変だったでしょう。快気祝いもかねて、二人のお祝いをさせてほしいのよ。それに、娘の花嫁姿“お母さん”はすっごく楽しみにしてたんだから」
茶目っ気たっぷりにウインクする敦子さんに胸がじーんと熱くなる。
「いいんですか?」
「いいに決まってるでしょう?」
結婚式のことなんて頭になかった。智光さんとの結婚は成り行きだったし、その後はちゃんとした夫婦になりたいとばかり思っていたから。
それに、たとえ結婚式をしても、私にはお金もないし呼ぶ人もいない。それなのにこんなあたたかい提案をしてもらえるだなんて。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「じゃあさっそくだけど、和装か洋装、どっちにする?」
「えっ? えっ?」
ずらりと並べられたパンフレット。
結婚パーティーといいながら、結構本格的なプランが書かれていて私はたじろぐ。
その後、仕事そっちのけでどの会場にするか、日程など、あたかも会議をしているかの如くきっちりとスケジュールが決められ、議事録まで作成された。
しかも最終的にはその議事録が社長の智光さんへメールで報告されたのだった。