愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
会議で決定したスケジュール通り、会場を決め打合せが始まり、そして衣装合わせと怒濤の日々を送った。

もちろんそれらは休日に智光さんと二人でこなすミッションなのだけど、着々と準備が進められる工程に、ドキドキとワクワクが鳴り止まない。

迷いに迷ったけれど、結局和装だけにした。
どちらも魅力的だったし試着もした。その時の智光さんのかっこよさといったら、もう、神々しすぎて直視できないくらい。まわりのスタッフさんたちからもキャーって歓声が上がっていた。

私も一緒になってキャーって騒ぎたいのを我慢してこっそりとその姿を目に焼き付けていたのだけど、ふいに目が合って智光さんがこちらに寄ってくる。

私を見下ろすと「やえ、とても綺麗だ」なんて甘く囁くものだから、私は恥ずかしくて顔が真っ赤になるし、一緒にいたスタッフさんなんて「イケメンオーラが体に堪えます」なんて言って私以上に照れてるし。

とにかく、智光さんは罪な男だった。

普段町工場で作業着を着て一緒に働いているから忘れていたけれど、彼はとんでもなくイケメンなんだった。

今さらながら、こんなに素敵な人が私なんかの旦那様だなんて、どんな奇跡が起きたのだろう。
間違いだったなんて、言わないでね。

「……何か不安か?」

ほら、こんな風に、私の心を読んでいるかのように私を気遣ってくれる。

「……智光さんがかっこよすぎるのがいけないんだと思います」

恨みがましく言えば、智光さんは不思議そうな顔をした。

「俺はとても不安だが……」

「何がですか?」

ドキリと心臓が嫌な音を立てる。
やっぱり私じゃ釣り合わないのかな、なんて思ったのだけど。

「やえの花嫁姿が可愛すぎて他の誰にも見せたくない。俺だけのものにしたいのに。考えただけで嫉妬狂いそうだ」

はあ、と智光さんは小さく息を吐きながら髪をかき上げた。私を見る眼差しが柔らかく、そして瞳の奥に熱を孕んでいて……。

ドックンと、先ほどとは違う心臓の音。
胸がきゅっとなって体の奥に熱を持つ。

ああ、もうダメ。
智光さん好きすぎる。

今すぐ抱きつきたい衝動に駆られたけれど、衣装が重くて我に返った。

ドキドキした気持ちが収まらないまま、打ち合わせはどんどん進んでいって、私はもう夢見心地だった。
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