愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
2.裏切り
お花見から数日後、朝の掃除をしていたら事務所裏で社長に出会った。お互いに始業前、会社の掃除をしているけれど、時間帯が合うときにしかバッタリ出くわさない。
「おはようごさいます」
「おはよう、幸山さん」
相変わらず爽やかな社長は朝日を浴びてキラキラと輝いている。
本日も見目麗しい。
見ているだけで私のドス黒い心が浄化されていくよう。
「桜が散ってきてしまいましたね」
たくさんの花びらは地面を覆い、枝には緑の葉が生い茂っている。
あんなに綺麗に咲き誇っていたのに、あっけなく散っていく。
まるで私の心と同じ。
楽しい思い出は一瞬で消え去るのだ。
なんだか虚しい。
お花見はあんなに楽しかったのに。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ……」
「元気がなさそうに見えたのだが?」
伺うように柔らかな視線を向けてくる社長の気遣いは上手い。胸がぎゅっとなる。
「……桜が散ってしまってなんだかもの悲しくなっただけです。お花見のときはあんなに咲いていたのに、今はもうだいぶ散ってしまったから。あっけないものですね」
八重桜が綺麗に咲いていたから名付けられた私の名前「やえ」には一瞬の栄華しかない。
桜が散ってしまったら終わり。
次の春が来るまで身を潜める。
私にはそれくらいの価値しかない。
年に一回咲くことができるだけましだろうか。
「幸山さん、始業までまだ時間がある。ちょっと付き合ってほしい」
「はい」
歩き出す社長の後を追う。
大きな背中はとても頼もしくて、縋りたくなるときがある。
いつも私の心を癒してくれるのは社長の存在だ。
今の久賀産業にとって社長の存在は大きく、この人がいるから働こうって思っている人も多いと聞く。
私もその一人で、社長が私たち社員を大切にしてくれているから、今日もまた頑張ろうって思える。
私は頭をブンブンと横に振る。
暗くなっていた心を無理やり閉ざした。
しっかりしろ、やえ。
ここは家じゃないんだから。
わざわざ嫌なことを思い出して落ち込むなんてもったいない。
せっかく素敵な社長といられる貴重な時間なんだから。
「おはようごさいます」
「おはよう、幸山さん」
相変わらず爽やかな社長は朝日を浴びてキラキラと輝いている。
本日も見目麗しい。
見ているだけで私のドス黒い心が浄化されていくよう。
「桜が散ってきてしまいましたね」
たくさんの花びらは地面を覆い、枝には緑の葉が生い茂っている。
あんなに綺麗に咲き誇っていたのに、あっけなく散っていく。
まるで私の心と同じ。
楽しい思い出は一瞬で消え去るのだ。
なんだか虚しい。
お花見はあんなに楽しかったのに。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ……」
「元気がなさそうに見えたのだが?」
伺うように柔らかな視線を向けてくる社長の気遣いは上手い。胸がぎゅっとなる。
「……桜が散ってしまってなんだかもの悲しくなっただけです。お花見のときはあんなに咲いていたのに、今はもうだいぶ散ってしまったから。あっけないものですね」
八重桜が綺麗に咲いていたから名付けられた私の名前「やえ」には一瞬の栄華しかない。
桜が散ってしまったら終わり。
次の春が来るまで身を潜める。
私にはそれくらいの価値しかない。
年に一回咲くことができるだけましだろうか。
「幸山さん、始業までまだ時間がある。ちょっと付き合ってほしい」
「はい」
歩き出す社長の後を追う。
大きな背中はとても頼もしくて、縋りたくなるときがある。
いつも私の心を癒してくれるのは社長の存在だ。
今の久賀産業にとって社長の存在は大きく、この人がいるから働こうって思っている人も多いと聞く。
私もその一人で、社長が私たち社員を大切にしてくれているから、今日もまた頑張ろうって思える。
私は頭をブンブンと横に振る。
暗くなっていた心を無理やり閉ざした。
しっかりしろ、やえ。
ここは家じゃないんだから。
わざわざ嫌なことを思い出して落ち込むなんてもったいない。
せっかく素敵な社長といられる貴重な時間なんだから。