愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
今日はいろいろあったな。
帰りのバスの中、私は会社での出来事を思い出していた。

ずっと、ほわほわしている。
優しくてあたたかい人たちに囲まれて、私は本当に幸せ者だ。
それに……。

――笑っている顔がいい

何度も何度も思い出す。思い出すたびに顔がニヤけているのではないだろうか。思わず両手で頬を押さえれば、ほんのりと熱を持っていることに気づき胸がトクンと高鳴った。

これからあの家に帰るというのに、今日は全然嫌な気持ちにならない。それくらい、私の心は弾んでいる。叔父さん叔母さんに何か言われても、今日だけは軽く受け流せそうだ。

少しだけ足取り軽く、私はスーパーで食材の買い足しをした。ぶりの切り身が特売だったので、今日はぶりの照焼にしようと思う。

スーパーを出れば空が薄暗かった。
風にのってほのかに湿った臭いがする。
もしかしたら雨が降るのかもしれない。
その前に洗濯物を取り込まないとと思いながら、家路を急いだ。
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