愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
トントンという音にハッと顔を上げる。
カラリと扉が開いて颯爽と入ってきた人物に目を見張った。どうやらそれは向こうも同じ様で、驚いた顔をしている。
「……社長?」
「幸山さん、目が覚めて……その腕は?」
「あの、これは……」
「点滴を引き抜いたのか?」
ベッドを振り返れば点滴の管と共に所々血が落ちている。それを見てようやく自分の左腕には点滴が刺さっていて、気づかずに勢いよくベットから飛び出したために針が抜けて腕が傷ついたのだと理解した。
その後バタバタとお医者さんや看護師さんがやってきて適切な処置を施され、あれよあれよという間にリネン交換までささっと終わってしまっていた。
ポカンと、されるがままだった私は再びベッドへ戻される。どこも悪いところはないし、むしろよく寝て調子がいいのか、寝ているのは忍びないのでベッドから体を起こした。
「体の調子はどうだ? どこか痛いとかつらいところはないか?」
「はい、特には」
頷けば、ギシっとベッドが揺れた。
社長がベッドに座ったのだ。
社長の長い指がこちらに伸びてくる。髪に触れたかと思うとゆっくりと撫でられ、その大きくてあたたかい手にいいのだろうかと思いつつもそっと身を任せた。
「……目を覚まさないんじゃないかと思って心配した」
「私、どれくらい眠っていましたか?」
「二日間だ」
「二日も? あ、仕事は……?」
「そんなこと気にしなくていい。それよりも……」
「うわっ」
ぐっと引き寄せられて社長の胸にすっぽりと包まれる。突然のことに激しく動揺し、心臓がバクンバクンと暴れだした。