愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
どうして社長は抱きしめてくれるの?
どうしてこんなに優しくしてくれるの?
人の温かさがとんでもなく恋しい。
ああ、ずっとこのまま時間が止まればいいのに。
そうしたら、あの家に戻らなくていいのに。
いくら社長が私の身の上を知って同情してくれたとしても、今までと生活は変わらない。
私が病院にいることを、叔父さん叔母さんはどう思っているだろう。帰ったら説教が待っていて、お兄さんからはいやらしい目で見られて、私はこの先どうやって生きていったらいいんだろう。貯金もないのに、この病院代だって払えるかどうか。
やっぱり死んだ方が――。
「俺は幸山さんを救いたい」
凛とした声に顔を上げる。
その眼差しは柔らかでいて強い。
救うだなんて……って思うのに、社長なら救ってくれるんじゃないかとも期待してしまう自分がいる。
「え……あ、はい。ありがとうございます」
社長と視線が交われば、いつになく真剣な表情で見つめてくるのでドキリとする。
凛々しく整った顔は心臓に悪い。
落ち着け心臓。
何を意識しているの。
必死に呼吸を整えようと胸の辺りを押さえれば、社長の綺麗で薄い唇がすっと息を吸い込むのがわかった。
そして――。