愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
嬉しいな。
明日は何を作ろう。
もっともっと智光さんに喜んでもらいたいな。
料理なんて好きじゃなかったはずなのに、なんだか好きになれそうな気がする。
食べ終わった後は智光さんが「洗い物は俺がする。それくらいなら貢献できる」とキッチンを陣取り、私は強制的にソファに座らされてしまった。
だけど結局手持無沙汰で落ち着かなくなり、智光さんの横に並ぶ。
「……一緒にやった方が楽しいですから」
「そうか」
智光さんは私を否定しない。
受け入れてくれることが嬉しくてたまらなくて、私は調子に乗ってしまいそうだ。
「次の休みに父のところに行こうと思う。いいかな?」
「はい、もちろんです」
智光さんのお父さん、先代の社長は私がとてもお世話になった方。病気で倒れてから一度は復帰したものの、今は会社を智光さんに任せて会長として陰で支えているようだ。
私もお会いするのは久しぶり。それに結婚のご挨拶に行くのだから緊張する。どう思われるだろうか。
「父はやえに会えることをとても心待ちにしていたな」
「本当ですか?」
「連絡したら今すぐにでも連れて来いとうるさかった」
「ふふっ、会長らしいです」
入社してからずっとお父さんみたいにいつも気にかけてくれた会長。面倒見がよくて優しくて社員想いで……。
「あっ……」
「どうした?」
「あ、いえ。智光さんと会長はよく似ていますね」
いつも社員のことを思って行動してくれる。
そんな慈悲深さがよく似ている。
けれど智光さんは少ししかめっ面をした。
そんな智光さんの表情も新鮮で、私はふふふと笑った。