愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
智光さんの実家は立派な門構えの日本家屋だ。
ガラガラと引き戸の玄関を開けると、よそのお宅の独特な香りに緊張が高まる。
居間には会長と奥様が座っていて、にこやかに迎え入れてくれた。
「やえちゃん、久しぶりだね。元気にやっているかい?」
「はい、お久しぶりです。えっと、今日は……」
「智光から聞いているよ。まさかやえちゃんが智光と結婚してくれるなんてなぁ。夢のようだよ」
「いえ、そんな。智光さんがご親切に結婚してくださるので――」
「やえ」
突然手が握られ、はっと智光さんを見る。
「その言い方だとまるで俺たちの間に愛がないように聞こえる」
「えっ、あっ……」
そ、そうだよね。
仮にも結婚のご挨拶なのに私ったら何て浅はかな。
でも私たちの間に愛って……?
と思いつつも、握られた右手が熱い。
「智光、やえちゃんが困っているだろう。お前がやえちゃんにぞっこんなのはよくわかった」
「ぞっ、ぞっこ……んっ……」
「こんな息子だけど、仲良くやってくれるかな?」
「えっ、あっ、も、もちろんです。こちらこそです」
私は慌てて頭を下げた。
チラリと智光さんを見ればやはり甘く微笑まれる。
心臓がどうにかなってしまいそうなほどにドキドキと落ち着かない。