愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
「智光さん、ありがとうございます」
智光さんはくっと目尻を下げると、ポケットから何かを取り出した。
なんだろう、四角い箱……?
その四角い箱を開ければ、キラキラと輝く指輪が入っていて……。
息をのんで見つめていると「左手を出して」と言われて素直に差し出す。ゆるくウェーブのかかった細身のリングにキラリと輝くダイヤモンドがひとつ控えめに埋め込まれている。控えめでいて存在感を放つリングはするりと左手の薬指にはまった。
私は左手を大事に抱える。
「……いいんですか?」
「当然だ。つけていてほしい」
「……智光さんのは?」
「……一応自分のも買ってあるが」
「……私がはめてもいいですか?」
智光さんはポケットからもうひとつの指輪を取り出し、私の手のひらにそっと乗せる。私はそれを受け取り、智光さんの左薬指にゆっくりとはめた。
とてもとても緊張した。
だけどおそろいの結婚指輪に心が躍る。
「ありがとう」
柔らかく目を細めた智光さんはとても眩しくて、胸がキュンキュンと悲鳴を上げる。
どうしよう。
すごくかっこいい。
すごくうれしい。
智光さんが好き――。
どうしようもなく膨れ上がった気持ちの対処法がわからず、私は手持無沙汰にシャンパンを口にした。
「好きなだけ飲んでいいけど初めてのアルコールなら少しずつ様子を見ながらにした方がいい」
「はぁい」
智光さんの忠告はちゃんと聞いていたしちゃんと守ったと思っていた。その後、私はとんでもない失態を犯してしまった。